1ページ目から読む
3/6ページ目

 電子証明書は一度“格納”するとずっと使えるというわけではない。

「だいたい2~3割の人が忘れています」

 引っ越しや結婚で住民登録が変わると、2種類のうち「署名用」の6~16文字は使えなくなる。証明書に基本4情報が含まれる形になっており、氏名や住所が一つでも変われば、自動的に失効してしまう。

 このため、転居(転入)届や婚姻届を出した市区町村の窓口で、新しい「署名用」の電子証明書を“格納”し直さなければならない。「なんで住所を移すたびに、電子証明書が切れてしまうのか。わざわざ付け直しの作業が必要になって、窓口の手続き時間が長くなり、住民を待たせてしまう」と話す職員もいる。

ADVERTISEMENT

 この「付け直し」には「署名用」の6~16文字のパスワード入力が必要になる。なのに「だいたい2~3割の人が忘れています」と、ある市の職員は嘆く。「最初の設定時に誕生日はダメ、他の人が分かりそうな番号も避けてほしいと言われ、真面目な人は少しでも分かりにくくしようと16文字いっぱいに設定してしまいます。覚えておけと言われても無理です」。

 パスワードが分からないと、再設定が必要になり、わざわざ申請書に書いてもらうところから始めなければならない。

 こうして作業が積み重なっていく。「手続きを簡略化するためのカードでもあるのに、本末転倒です」と話す職員もいた。

 そもそもマイナンバーカードを使ったからといって、手書きの申請書がなくなるわけではない。

「窓口で書いてもらう事項は結構あります。例えば、児童手当の申請書類はA4の用紙にびっしり情報を書いていただきます。印鑑登録の申請なども加わります。『マイナンバーカードを使ったのに、なぜこんなに時間がかかるのか』と怒り出す人もいます」と、職員の一人は言う。

 結局、これらもろもろの作業を総合すると、マイナンバーカードの導入で手続きにかかる時間は短縮できるようになったのか。

「むしろ時間がかかるようになりました」

「マイナポータルを使って申し込めば、窓口に来庁する日にちを予約でき、私達も事前に書類を準備して、氏名や住所を入力しておくので、住民の皆さんの省力化に結びついている面はあります。しかし、実際には申請書に書いてもらう時間や、カードの内容更新も含めると微妙ですね。以前とそれほど変わらないような気もします。ただ、窓口で受け付けるまでの時間は早くなったので、混雑は緩和されたように感じます」と、住民課の職員が話していた。

 出先の支所では少し事情が違うようだ。「むしろ時間がかるようになりました」と話す職員もいた。どういうことなのか。