今振り返っても、春と夏の2回の甲子園出場を果たせたのは、僕の財産となっています。よく「春に甲子園に行って天狗にならなかったのですか?」と聞かれたのですが、僕には「夏の甲子園出場を目指す」のと同時に、「1年の夏に見た斉藤さんに並んで超えること」を目標に置いて練習を積んできました。天狗になる考えと時間などなかったというのが正直なところでした。
その結果、この年のドラフトの目玉と言われる存在にまで成長できたことは、僕にとって大きな自信となりました。
この年の秋のドラフトで、僕はオリックスから1位指名を受けました。この年のドラフト1位の12人のうちの1人に選ばれたということは、正直なところ光栄な気持ちでいっぱいでした。
同時にプロのレベルというのは一体どれほどのものなのか、まったく見当がつきませんでした。高校とは比べものにならないほどレベルが高いことくらいは想像できましたが、いったいどれほどまでのものなのか、僕はこの目でしっかりと見てみたいという好奇心もあったのです。
1年目のキャンプで「とんでもない世界に来ちゃったな」
いざ入ってみると、僕の想像をはるかに超えていました。体力や技術もさることながら、守備においてのムダのない動き、投手のストレートのキレや変化球の精度、コントロールの良さなど、すべてが異次元でした。
「とんでもない世界に来ちゃったな」
というのが、プロ入り1年目での春季キャンプの印象でした。
それに一流の選手ほど、毎日「これは必ずやる」とルーティーンにしていることを徹底的に行っていることも知りました。イチローさん、田口壮さん、谷佳知さん……一軍でレギュラーとしてバリバリ活躍している人ほどそれが顕著に表れていて、「妥協」という言葉とはまったく無縁な人たちでした。