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「プロ7年間で9試合登板、0勝1敗で引退…」超高校級左腕でビックマウス・平安の川口知哉(43)はなぜオリックスで輝けなかったのか《母校でコーチに就任》

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 入団4年目以降は、自分の将来についてあれこれ考えるようになりました。本来であれば、プロ野球の世界で活路を見出すべきだったのでしょうが、僕自身はこの先、技術的に向上するとはとても思えなかった。こうしたネガティブな思考に陥ってしまうと、あとは下に落ちていくだけです。

 2004年の秋、オリックスから戦力外通告を受けました。その後はトライアウトを受けたのですが、僕にとっては現役を続けるためというよりも、「プロ野球人生にけじめをつけるため」の色合いが強かったのです。

 プロ生活7年間で、9試合に登板して0勝1敗――。僕がプロの一軍の世界で残した成績でした。

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 2022年4月1日。25年ぶりに母校のユニフォームを着てみると、身の引き締まる思いがしました。高校野球の指導者として今の高校生と接していくなかで感じることは、「僕たちの頃とは感覚が違う」ということです。

高校時代は甲子園準優勝の実力とビッグマウスで有名だった ©️文藝春秋

「おっ、平安や。あれが川口か」「ユニフォームからしてカッコええな」

 たとえば近畿は大阪桐蔭を筆頭に、履正社、智弁和歌山、智弁学園、報徳学園、天理と、高校野球ファンなら聞きなれている学校が多々ありますが、ウチの選手たちが他の強豪校を見た途端、「うわ、大阪桐蔭や」「おお、報徳学園がいるわ」と自分たちで立ち位置を決めてしまっているような感じを受けました。

 僕が高校生のときは違いました。たとえば近畿大会の開会式で他校と一緒にいると、

「おっ、平安や。あれが川口か」

「ユニフォームからしてカッコええな」

 などと言われ、他の強豪校から目標にされていたのに比べると、今の平安の選手たちは、他の強豪校を目標にして戦っている気がしてなりません。チャレンジャー精神があるのはいいことですが、もっと胸を張って、「オレたちは平安なんや」と堂々とした立ち居振る舞いをして、時には強豪校相手でも相手の力を正面から受け止めるという存在であってほしいと思うのです。

 そのためには、彼らに大切なのは、「自信を持たせてプレーさせること」。こう言ってはなんですが、格下の相手には堂々と振る舞い、格上の相手だとシュンとしてしまうようでは、全国はおろか、近畿でも勝ち抜くのは厳しいと思います。

 それならばもっともっと技術を高める練習をするべきですし、自分自身を精神的に追い込んで厳しい練習に身を投じるのもいい。技術を高めるだけの練習だけでは、メンタルは鍛えられませんし、メンタルばかり鍛えていては肝心の技術の向上がおろそかになる。このあたりの練習方法についてはバランスが必要ですが、平安の選手たちは「まだまだ伸びしろが無限にある」と期待しながら指導にあたっています。

©️共同通信社

 甲子園は本当にいいところです。とくに夏は春より熱く盛り上がります。高校野球生活で悔いを残すことのないように、楽しさやうれしさ、厳しさ、難しさ、悔しさのすべてを糧にしてもらいたい。そのためにコーチの僕が、原田監督と選手の間に立って、最大限のサポートをしていき、最後は栄冠をつかんでもらいたいと考えています。

その他の写真はこちらよりぜひご覧ください。

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