【第7ブロック:第66~75局】(利き手側:糸谷)
2日目の解説は深浦康市九段と木村一基九段、聞き手は竹部さゆり女流四段が務めた。
深浦、木村に切れ負け将棋の思い出を聞いた。
「切れ負け将棋は30年ぐらい前、奨励会級位者の思い出です。例会が終わったあと、熱気を冷ますためによく指しました。現役棋士だと、丸山さん(忠久九段)がよく相手になってくれました。5分切れ負けが多く、2分切れ負けはほとんど経験がありません。有段者になってからは、切れ負けをやっていません。手が荒れてしまいますからね(早指し特有の直感勝負になり、指す手が雑になるという意味)。
糸谷八段はうまいです。相手の狙いを察知して、事前にそれを消しています。天彦君が時間を使ってしまうウィークポイントをうまく突いていますね」(深浦九段)
「昔は秒読み機能がついた対局時計がないので、早指しの練習将棋をやるなら5分切れ負けになるんですよ。有段者になってくると、早く指すよりも長く深く読むのが大事とわかってくるから、ほとんどやらなくなりました。
いまABEMAトーナメントで指しているフィッシャールール(持ち時間が各5分、1手ごとに5秒が加算、切れたら負け)は、10分切れ負けに近い感じです。2分切れ負けだと、とりあえず手を動かさないといけませんね。ちなみに、初期のデジタルチェスクロックは0.3秒未満の着手は1秒にカウントされないと聞きました。
今回は糸谷さんの敏捷性がよく出ています。天彦さんは最初こそとまどっていましたが、いまは慣れていますね」(木村九段)
昔はデジタルのチェスクロックがないため、早指しの練習将棋で定番の10秒将棋ができず、切れ負け専用のチェスクロックを使うしかなかった。1日目に訪れた森内俊之九段も「5分や10分切れ負けをよく指した。村山さん(聖九段)、羽生さん(善治九段)が強かったイメージ」と語っている。
佐々木勇気八段は「いまでも、たまに指します。昔は得意でした。あまり考えないで指すのがコツですが、その日のコンディションで全然違います」と話していた。デジタルのチェスクロックがある世代かつ、棋士になってからも切れ負けを指しているのは相当に珍しい。
第70局、佐藤玉が糸谷の金が利いているところに逃げてしまう「自殺手」が出て反則負け。金ではなく銀を打ってくると読んでいたから起きたもので、先読みを重ねてハイスピードな戦いを繰り広げているのが裏目に出たか。頭の回転に目と腕が追いついていない印象を受けた。
総合→佐藤35勝、糸谷40勝
第7ブロックの勝敗→佐藤6勝、糸谷4勝
切れ勝ち→佐藤0回、糸谷2回