昨年度の将棋界を「観る将」の視点で振り返る「観る将アワード」。

 4年目の開催となる今年は、「名局賞」「最優秀棋士賞」「最優秀女流棋士賞」「ベストパフォーマー賞」「ベストエッセイスト賞」「名言賞」「ベスト棋譜コメ賞」「ベストサポーター賞」の8つの部門に、観る将ファンの方から熱い投票をいただいた。

 選考会場は、今年も「読む将の聖地」であるジュンク堂池袋本店。深浦康市九段と遠山雄亮六段とともに行った選考会の様子をご紹介したい。まずは「名局賞」選考の様子からお届けしよう。

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選考委員の深浦康市九段(右)と遠山雄亮六段(左)©文藝春秋

もっとも票を集めたのは棋王戦の第3局

――観る将のみなさんから事前に投票いただいた結果、票数の多い順からこのようになりました。

1位 棋王戦第3局 渡辺明棋王-藤井聡太竜王
2位 王将戦第2局 藤井聡太王将-羽生善治九段
3位 朝日杯将棋オープン戦 藤井聡太竜王-増田康宏六段

――もっとも票を集めたのは、棋王戦の第3局でしたが、これがどういう将棋だったかご紹介するために、詳しく書いてくださったコメントをご紹介します。

 まさに最高峰の戦いにふさわしい名局でした。渡辺棋王リードで迎えた両者1分将棋の最終盤、藤井竜王がじりじりと差を詰めた中、巡ってきたチャンスにまさかの藤井竜王の詰み逃し。気付いてから全く隠すことなくがっくりとした様子からは、藤井竜王は決して相手と戦っているわけではない、盤上に提示された局面と戦い、また自分自身と戦っていると言うことだと理解しました。

 私は藤井竜王ファンなので、勝ち局を名局に挙げたいところですが、藤井竜王の盤上の最善だけを求める姿に胸を打たれ、本局を挙げさせて頂きました。

 藤井竜王の信用度なら、自信満々に指し続ければ、1分将棋なので、相手も「まだ何かある?」と考え過ぎてミスを誘う可能性だってあるかも知れないと思うのですが、そう言う部分には一切勝負を求めない姿に美しさを感じました。

 渡辺棋王も、藤井竜王の先手28連勝で止め、最高のパフォーマンスでカドバンをしのぎ、意地を見せたのは素晴らしかったと思います。

 観る将として、これ以上の名局はなかったと思います。

(50代・女性)

サッカーやラグビーのような超スリリングな展開

――ジェットコースターのような最終盤だったのですが、深浦先生はこの対局の立会人をされていたんですよね。現地はどういった状況でしたか?

深浦 3月の上旬に新潟で行われた対局で、報道の方は新潟日報や共同通信の方が中心にいらっしゃるんですけど、控え室では叫び声が上がっていましたね。報道の方は、予定稿を書く関係で、どっちが勝ちかを中心に見られるのですが、何しろジェットコースターのように評価値が変わっていましたから。AIが入るひと昔前の本当にどっちが勝ちかわからない時代の控え室のようでしたね。

遠山 歓声も上がって。

深浦 はい。盛り上がっていました。