羽生さんの潜在能力はやはりすごい
――次に得票2位だったのが王将戦の第2局でした。コメントをご紹介します。
王将戦番勝負、誰もが待ち望んでいるカードでありながら、多くの人が正直なところ、一方的な内容になりかねないことを心の底でちらりと予想していたのでは?と思う。その予想をぶち壊した第2局、羽生先生らしい、らしすぎる手が飛び出しての勝ち。結果的にタイトル奪取こそならなかったけれど、ここ2年くらいで一番わくわくしたし興奮したタイトル戦シリーズだった。終わってしまったのが今でも寂しい。
(30代・女性)
――このコメントにもありますが、事前の予想を覆す羽生先生の大健闘ととらえた人も多かったように思います。
深浦 対局前の予想では、やっぱり藤井さん寄りの声が多かったですよね。ただ、蓋を開けてみればシーソーゲームで、羽生さんの潜在能力はやはりすごいと思います。また自分は王将戦の第6局の立ち会いに行きましたが、前夜祭から羽生さんファンの方が多かったですね。心から羽生さんの100期を待っている方の熱気を感じました。
遠山 どうしてもタイトル戦だと、藤井さんのファンが多いって言われますもんね。
――遠山先生は、羽生先生の大健闘という感じがありますか?
遠山 私は、羽生九段を見て育ってきたこともあり、開幕前からいい勝負じゃないかなと思っていました。この2局目は、本家のほう(日本将棋連盟による将棋大賞)の名局賞なんですけど、羽生九段がベストパフォーマンスを発揮されれば、これくらいいい将棋になるのは当然だと思います。シリーズを通していい将棋が多かったのですが、深浦さんが立ち会いに行かれた第6局は羽生九段にとって不本意な内容でしたかね。そのときの羽生九段は、どういった様子でしたか。
深浦 翌日、一緒に昼食を食べましたけど、かなりほがらかでしたよ。投了する前は少し悔しそうでしたけど、感想戦で、いろいろ話していい感じで終われたんでしょうね。王将戦を特集したNHKスペシャルが放送されましたが、あれを見て羽生さんはあんなに笑うんだというのが自分には意外でした。
――昔とは違いますか?
深浦 違いますね。昔は羽生さん怖かったですよ。あんなに笑うことはなかった。
遠山 そういえばそうですね。
逆方向に金を打つのが羽生流
――もうひとつコメントご紹介します。
鮮烈な8二金を始め、藤井王将の猛攻や香車の限定合いの終局図等、見所の多い名局だったから。
(30代・男性)
――中盤に離れたところに金を打つんですよね。
深浦 そうですね。あれが羽生流という独特の感覚なんですね。自分も8二金を見て、「こういう手にやられたな」と思い出しました。
遠山 嫌なことを思い出した金だったんですね。
深浦 そう思った人、けっこういると思いますよ。