昨年度の将棋界を「観る将」の視点で振り返る「観る将アワード」。

 観る将ファンからの熱い投票を受けて、深浦康市九段と遠山雄亮六段とともに行った選考会の様子をご紹介したい。

ジュンク堂書店池袋本店にて行われた選考会議の様子 ©文藝春秋

人間レベルではない藤井竜王の勝率

――では続いて「最優秀棋士賞」の話に移りたいと思います。まずみなさんからの投票結果はこうなりました。

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1位 藤井聡太竜王
2位 羽生善治九段
3位 菅井竜也八段

――やはり1位は藤井聡太竜王でした。いくつかコメントをご紹介します。

 タイトル六冠・全棋戦制覇を成し遂げられたため。他に推し棋士がいるので、正直悔しいのですが、認めざるを得ません。

(40代・女性)

 タイトル戦を1つも落とすことなく六冠達成、しかも今年は4棋戦グランドスラム達成でトップオブトップなのに勝率もトップとかもう人間やめてるレベルだと思います。六冠達成がインパクトでかすぎてグランドスラムがほとんど話題にならないレベルなのが寂しいので、グランドスラムの凄さをアピールしたいですね。

(50代・女性)

――一般棋戦と呼ばれる朝日杯将棋オープン戦、銀河戦、NHK杯、将棋日本シリーズすべてで優勝するグランドスラムを達成されたわけですが、これがいかにすごいのか、ちょっと解説いただけますか。

深浦 すべてトーナメントなので1回負けるとダメ。しかもそれが早指し戦ですから、それでしっかり勝ち切るというのは並大抵ではないですね。自分もNHK杯を優勝したときは心から嬉しかったですけど、それを1年に4つ重ねるというのは、たしかに人間レベルではないですね。

1年間で「五冠」から「六冠」になり、一般棋戦グランドスラムも達成した ©文藝春秋

――人間やめてるレベルと書いてありますね(笑)。

遠山 本当にすごすぎますよね。早指しが弱いって言われていませんでしたっけ?

――自分でも苦手っておっしゃっていましたよね(笑)。

その分野の頂点に立つ人は似ている

遠山 朝日杯が大きかったですよね。逆転につぐ逆転で、豊島将之九段には詰みを逃してもらって。ピンチもいっぱいあったけど、運を引き寄せる実力もあったんでしょうね。豊島さんが詰みを逃すって、あまり記憶にないですから。

深浦 やはり藤井さんに対しては、勝ちにいくまでの過程がとんでもなく険しいですから。

遠山 最後、ゆとりがないんでしょうね。

深浦 本当にいっぱいいっぱいですからね。最後、詰みがあると言ってもらったら違うかもしれませんが。

――もうひとつコメントご紹介しましょう。

 野球で例えるとするなら、大谷翔平選手とダブります。野球しか知らない。将棋しか知らない。無駄なお金の使い道を知らない。常に周りに気を配れる、将棋界のことに常に貢献する。

 可愛い。嫌味がない。謙虚だ。とにかく、その分野の頂点に立つ人は似ている。

(60代・女性)