1ページ目から読む
4/7ページ目

――羽生さんらしい手ですか?

深浦 このタイミングでここにくるかって感じなんですよ。

遠山 逆方向に金を打って、それがいい手っていうのは羽生流ですよね。気づいても失敗しやすい手ですもんね。

ADVERTISEMENT

――こういった手を見て、昔からのファンの方は喜ばれたでしょうね。

劣勢の将棋ばっかりだった朝日杯

――次に得票で3位になった朝日杯将棋オープン戦の藤井聡太竜王-増田康宏六段戦に寄せられたコメントをご紹介します。

 1月15日、あの場所にいました。真ん中あたりの端の席でした。評価値なしで盤面を映し出したスクリーンだけを見つめていました。対局者を見たらスクリーンは見えない角度でした。長い秒読みの中、何か起きていることはわかりましたが、帰宅途中の電車の中で棋譜中継を見た時の驚きといったら! わたしが感じているよりずっと前から、いろいろなことが起きていたのでした。すごい体験をしたんだなあとあの場所にいられたことに感謝した1日でした。

(50代・女性)

――これは名古屋対局の現場におられた方ですね。評価値を見ないでご覧になっていたと。

遠山 棋譜中継を見ると、評価値の乱高下がわかるので、後から驚かれたんでしょうね。

――この対局は、藤井竜王が追い込まれていた局面がありましたよね。

遠山 朝日杯は、この日のもうひとつの阿久津主税八段戦も大苦戦で、劣勢の将棋ばっかりでした。この将棋も入玉されて、一瞬、全然ダメな感じでしたよね。

絶体絶命に見えても終盤でひっくり返す藤井竜王

――もうひとつコメント紹介します。

 絶体絶命と思われた藤井竜王が12連続王手で詰めろを振りほどき、入玉されても相入玉を目指さず寄せに行ったのには痺れました。1分将棋の死闘が続く中、増田六段に大きなミスがあったわけでもなく、まさに両者が創り上げた名局でした。

(60代・男性)

深浦 そうなんですよね。絶体絶命に見えましたけど。藤井さんが詰ませにいっているうちに、藤井さんの玉が中段に行って。混戦に導いたという。

遠山 終盤が強いんですよ、藤井さん(笑)。

深浦 知ってる知ってる(笑)。

遠山 先ほど話した棋王戦の第3局も、この将棋も劣勢でした。しかも相手は渡辺名人と増田七段ですからね。そのなかで追い上げて、棋王戦は最後負けになりましたが、どちらもいっときはひっくり返すんですからね。本当に終盤が強いんですよ。

負けたほうが話題になってみんなの記憶に残る

――ベスト3のうち、藤井竜王が負けた将棋が二つ入っていますね。

遠山 この「観る将アワード」の名局賞、2年前は藤井さんが初タイトルを取った棋聖戦。去年が難解な詰みがあった竜王戦と、どっちも藤井さんが勝った将棋ですが、今年は1位、2位ともに藤井さんが負けた将棋。

深浦 そっか。本当だ。

遠山 3位も藤井さんが苦しんだ将棋で、こういった傾向を見ると、なんか藤井さんが遠いところに行ってしまった感じがします(笑)。