偉大な棋士にふさわしい、敬意が込められた神聖な対局
――最後に、とても印象深い対局を挙げておられた方がいたのでご紹介します。第35期竜王戦の桐山清澄九段-畠山鎮八段戦です。
観る将的な名局ということで対局の背景込みで選びました。本来御上段の間での対局の予定だったが桐山畠山鎮戦に譲られた谷川十七世名人、それに気がつかれて御礼に向かわれる桐山九段。桐山九段の引退試合に失礼があってはならぬと正座で通すために鍛えられて、そして朝は誰よりも早く連盟入りした畠山鎮八段。偉大な棋士・桐山清澄九段の引退試合にふさわしい、随所に敬意が込められた神聖な対局でした。
……ではおわらないところが将棋界のすごいところで、引退試合であっても相手に華を持たせるということはなく、敬意は持ってもちゃんと勝つ。どんな対局でも手は抜かない。そんな将棋界の魅力もしっかり見せてくださった1日でした。
(30代・女性)
遠山 私、棋士会も一緒にやっているので、畠山鎮八段と仕事をご一緒する機会が多いのですが、先輩に対する敬意の表し方が畠山さんらしいなと。畠山さんは奨励会幹事をされていて、そこにいた人たちが関西ではとても活躍しているのですが、こういう後ろ姿を見せてきたんだなと思いました。
深浦 この将棋も見ましたけど、桐山先生の将棋って、前に前に出るんですよね。やっぱり大棋士・桐山先生の将棋を見せていただいたなという印象です。
――いろんな対局を見ておられて、観る将の方々は改めてすごいなと思いますね。
深浦 本当ですね。目線が記者並みですよね。
遠山 鋭いですよね。
名局賞は棋王戦第3局、渡辺明棋王-藤井聡太竜王に決定
――さて、このほかにもたくさん投票をいただいたのですが、名局賞をひとつ決めていただけますでしょうか。
深浦 そうですね。王将戦で藤井さんと32歳も違う羽生さんが挑戦者になったというのも本当に意義のあることで、これも印象に残っています。そして終盤の大逆転の棋王戦は、自分も立ち会いをやっていますので、とても思い出深いです。
遠山 どちらも素晴らしい将棋でしたね。本家が王将戦の第2局だったので、こちらは棋王戦でいいのではないでしょうかね。
――なるほど(笑)。
遠山 みなさんのアンケートもこちらが多かったので棋王戦でいいのではないでしょうか。
深浦 そうですね。
――では、名局賞は棋王戦第3局、渡辺明棋王-藤井聡太竜王戦に決まりました!
受賞の言葉(渡辺明名人):
「今回の受賞、ありがとうございます。本局は良くなってからの指し方に悔いは残ったのですが、それが終盤のドラマを生むことになり、藤井竜王の先手番連勝を止めたという意味でも記憶に残る一局になりました」