いつも変わった観光地やレトロな風景を訪れている私だが、旅の宿泊先は費用を抑えるために、よくあるカプセルホテルやゲストハウスなど価格重視で選ぶことがほとんどだ。
しかし、ときには、変わったホテルやレトロな旅館が目的地になる場合もある。そこはもはや泊まるだけでなく、ホテルや旅館が丸ごとエンターテイメントとしての機能を持っているような場所だ。今回は私が訪れてきた中で、特に印象深かった東日本のホテル・旅館を紹介する。
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中華料理チェーン店が経営する“旅館”
●老神温泉 ぎょうざの満州 東明館(群馬県沼田市)
東京・埼玉を中心に展開する中華料理チェーン店「ぎょうざの満州」。そのオーナーが群馬県沼田市の老神温泉出身だったことから、地元を盛り上げたいと、2010年、廃業した温泉宿“東明館”を買い取ってリニューアルオープンしたのが「老神温泉 ぎょうざの満州 東明館」。
1階レストランがそのまま「ぎょうざの満州」になっており、レストランだけ、温泉だけ利用することもできる。餃子とビールと温泉が楽しめ、そのまま泊まることもできる物珍しさも相まって週末は宿泊予約が取れないほどの人気ぶり。パーティールームもあり、ここで宴会したら……と想像するだけで楽しそうである。
いざ泊まってみると裸足でも歩き回れるくらいどこを歩いてもキレイな館内は当然居心地がいい。館内着の作務衣や用意されたタオルにはぎょうざの満州の名前と、イメージキャラクターのランちゃんが描かれており、このノベルティ感に旅情すら感じる。
朝食はどんなものかと期待すると「さすが!」と唸ってしまう、ボリューム満点の中華メニューであった。もちろん餃子もついてくる。自然に囲まれた静かな地で、広い浴場と馴染みの料理に心から癒やされた。帰りたくない。
レトロ好きの間で聖地と呼ばれる“宿泊施設”
●公楽園(新潟県燕市)
新潟県燕市。レトロ好きの間で聖地と囁かれている、国道116号線沿いに建つドライブイン、公楽園。
2階は宿泊施設になっており、泊まりはもちろん、休憩と入浴だけでも利用可能だ。入り口では、創業25周年(開店は1976年)特別企画が、今でも毎日開催中とある。
2階へと上がると、銀色の壁に緑色のカーペットという独特なレトロ感溢れる細い廊下の両側に、9部屋の客室が並ぶ。和室と洋室、そして「特別室」と書かれた客室はどれも、歴史を重ねてきたヤニ色に染まっている。
1階にはゲームコーナーとレトロ自販機が並ぶ飲食コーナー。中でも焼き立ての状態で出てくるトーストサンドの自販機は珍しく、私も遭遇したら必ず買うようにしている。ボタンを押しておよそ1分。アルミホイルに包まれた、持てないくらいアッツアツのトーストサンドには、ハムが申し訳無さそうに1枚入っているのみ。
私はこれで食欲を満たそうとしているわけではない。自販機でトーストサンドを買うという体験に価値があるのだ。