デベロッパーやゼネコンも震え上がっている
だが、今回の改正で震え上がっているのは富裕層ばかりではない。タワマンを建てまくっているデベロッパーやゼネコンだ。彼らにとってタワマンはとてもおいしい商品だった。考えてみれば節税を目論む富裕層にとっては時価と評価額の乖離が大きいほど節税になる。つまり価格は「高ければ高いほど」節税効果は大きくなる。買う際に借入金をすれば借入残額も評価額から差し引けるので、マンション価格が高騰し続けている限り、デベロッパーも金融機関もウハウハの状況だった。
ところが今回の改正によって相続時の評価額が戸建てのそれと変わらないものとなってしまえば、節税という営業にとっての錦の御旗は降ろされることになる。タワマンの販売は好調と言われているが、購入者のうち節税を意識した高齢富裕層の割合はかなり高いと言われている。特に地方の富裕層は、節税を意識しながら自らが住む地方の中心都市に建つタワマンを好んで買う傾向がある。やはり自分に馴染みのある立地で買いたいという思惑もあるだろう。
デベロッパーの一部は現在、こうした需要を取り込もうと地方主要都市や郊外衛星都市の駅前で数多くの市街地再開発事業を推進している。この開発方式は、郊外や地方都市の主要駅の駅前で、既存の商店などに声をかけて市街地再開発組合を設立。彼らの持つ店舗などの権利を再開発で出来上がる新しい商業施設やマンションなどの床に権利変換できるものである。
“再開発のからくり”とは
商店主らにとっては高齢化もし、子供たちも引き継がないお店や事業をたたむのに、単独では開発できなくとも、組合を結成して自らの不動産を差し出し再開発することによって無償で新しい建物の床を取得できるという誠に夢のような開発方式なのだ。
なぜ彼らが無償で取得できるかと言えば、彼らの持つお店などの不動産価値を測定し、その価値分の床に変換できるからだ。そして新しい建物は自治体から容積率のボーナスをもらい、超高層建物を建設。その建設資金をデベロッパーがすべて負担してくれるからだ。もちろん、デベロッパーは出来上がる建物の床を買い取り、タワマンにして分譲。開発資金を回収し利益を得るのだ。マンション分譲にあたって有力な顧客として、その地域で相続が心配になった富裕層などに買ってもらう。この事業はこういったからくりによって成り立っているのだ。この方式には自治体も容積率のボーナスを認める代わりに、建物内にホールや図書館などの公共施設を整備することができるので、喜んで開発を認めるのだ。
だが、肝心の相続対策で買ってくれる人がいなくなってしまうと売れ行きはどうだろうか。東京都心部であれば、不動産投資を目的とした国内外マネーが入るし、なんとか富裕層の仲間入りがしたいパワーカップルがたっぷりのローンを組んで買ってくれるかもしれない。だが郊外衛星都市や地方都市ではそんな顧客は少数だ。