今世間では、タワマン節税が税制改正によって封じ込められることになるとの話で盛り上がっている。発端は今年1月に行われた国税庁の有識者会議において改正の方針が固まったとの報道だ。

 不動産を所有するとかかる税金の代表的なものが、固定資産税、都市計画税および相続時に発生する相続税である。

 最初に問題となったのが、固定資産税負担だ。固定資産税は土地と建物に対して課せられる税金だが、分譲マンションの多くは、土地は敷地権の共有、建物は区分所有となっている。このうち土地部分の固定資産税は敷地全体の固定資産税評価額を持分割合で、建物は区分所有面積に共用部面積を持分に応じて按分したものを加えて課税される。

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写真はイメージ ©iStock.com

 マンションは戸建て住宅と比べて土地が高度利用されているため、戸当たりの所有面積は小さい。特にタワマンがそうで、敷地面積が4000坪あっても住戸が1000戸もあれば、単純計算で戸当たりの土地所有面積は4坪に過ぎなくなる。したがって都心部の土地であってもマンションなら土地の所有権が小さいがゆえに固定資産税評価額も低くなる。特にタワマンなどの超高層マンションは上層部に行くほど時価は高くなり、戸当たりの時価と税務上の評価額の乖離が大きくなる。これでは税の公平性が保てないということで行われたのが2017年の税制改正で、階層によって評価額に差をつけ、高層部にいくほど評価額を調整するようにしたのである。

相続発生時点での相続税評価額にもメス

 今回の改正では、さらに相続発生時点での相続税評価額にもメスを入れたのが特徴だ。相続税評価額の計算は、土地は路線価、建物は固定資産税評価額による。路線価はおおむね公示価格の8割相当、固定資産税評価額が7割相当なので、やや高めに設定されているが、昨今のように不動産価格が急上昇しているような場合、時価との乖離は大きくなる。

 ここで問題となったのがタワマンに代表されるマンションだ。国税庁の資料には、東京、福岡、広島でのマンションの実例が掲載されている。東京都内にある43階建てのタワマンの実例。23階67.17㎡の住戸の実勢価格(時価)は1億1900万円。ところが相続税評価額を算出すると価額は3720万円。なんと実勢価格は評価額の3.2倍にもなっている。相続人が子1名とすると、基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人数)3600万円を引くと課税価格は120万円。マンションだけが相続財産だとすれば、税金はわずか12万円(税率10%)となる。

 同資料では福岡のマンション(築22年、9階建ての9階部分、78.2㎡)での実勢価格との乖離が2.36倍、広島のマンション(築6年、10階建ての8階部分、71.59㎡)で2.34倍などと実例を示しながら、相続税評価額が実勢価格と乖離しているさまを掲げている。