1ページ目から読む
4/4ページ目

動き出しているプロジェクトを途中でやめるのは難しい

 この改正で実は打撃をくらうのは、相続対策のつもりで買い、いまだに相続が発生していない現所有者とこれから郊外衛星都市や地方都市などでタワマンを想定した市街地再開発事業を積極的に手掛けているデベロッパーだ。前者はしたはずの対策が不十分になるばかりでなく、相続発生後に売却して相続対策のために組んだローンも返済しちゃえば良いと思っていた人たちに暗い影を投げかける。それまで価格は高いほうが節税効果は高いから中古で販売する際には、新たに相続対策をやりたい顧客に売れたのが、売れなくなることが予想されるからだ。

 いっぽう市街地再開発事業は現状でも国内で100件以上が計画されているが、この事業は権利者の意見調整に時間がかかるためたいていは10年から15年の長い期間をかけて手掛けているものがほとんどだ。つまり動き出しているプロジェクトを途中でやめるのが難しい事業ともいえる。単独開発とは異なり、走り出したものを途中で投げ出すわけにはいかないのだ。特に参画を表明してしまったデベロッパーは出来上がるタワマンを前に頭を抱えてしまうかもしれない。

改正のきっかけになったある判決

 はてさて困った事態になったものだ。この改正のきっかけになったのが、昨年最高裁で判決があった、札幌市のマンション2棟の相続評価額を巡って相続人と税務署が争った事例と言われている。これはタワマンではなく2棟のマンションを相続したケースだが、相続対策を考えた相続人が13億円強の価格で賃貸マンション2棟を父親名義で買い、相続が生じた際に評価額3億3370万円で評価して相続税を激減させた事例に対し、税務署がその評価が実勢価格とかけ離れているとして12億強の評価を新たに行い、課税を主張した裁判だった。

ADVERTISEMENT

 税務署の対応に不服を唱えた原告が最高裁まで上告してしまったがゆえに大きな話題となり、今回の評価の見直しにつながったとされる。よほど悔しかったのだろうが、節税などというものは所詮納税者と税務署のいたちごっこにすぎない。「欲ばるのもほどほどに」ということだ。