ただ、今は息子もかなり大きくなってきたので、見せられないものは見せられないと直接本人に話しますね。映画『はるヲうるひと』(佐藤二朗さん原作・脚本・監督)は「まだ君が見るには早いけど、時期が来たら観てくれよな」って伝えています。そしたら「わかった~」と言ってました。
――結婚して20年を迎えた今でも、晩酌しながら夫婦で話すのが毎日の楽しみだそうですね。
佐藤 妻とは、付き合っていた頃も含めたら30年近く一緒にいます。それでも、会話をするといまだに彼女の新しい一面を発見するんですよ。同じ映画を観ても違う感想を持つし、同じニュースを見ても違う価値観がある。それが面白いんですよね。
――「年を重ねるごとに会話が減る」と悩む夫婦も多い中、なぜ佐藤家ではいつまでも仲良く過ごせているのでしょうか?
佐藤 いろいろ理由はあるかもしれないけど、一番は僕が彼女を好きだからでしょうね。
――Twitterでもおなじみの惚気話が聞けて嬉しいです。
佐藤 もっと「ケッ!」と思わせてしまうかもしれないけど、最近妻に「俺、いつまでも君を好きでいられる魔法をかけられた!」って言ったんですよ。そしたら彼女から「やっと気づいたか」と返されましたね。
俳優研究所で「妻」と出会ったときの鮮明な思い出
――そんな素敵なパートナーとは、俳優研究所で出会ったそうですね。
佐藤 僕が2つ目に入った研究所で出会いました。実は、出会ったときのことをいまだに鮮明に覚えているんですよ。
稽古後に部屋を掃除するとき、まだ入ったばかりで掃除用具がどこにあるかも分からなかった僕に対して、先輩だった妻が「雑巾はあのロッカーに入っています」と教えてくれて。そのまま僕の横を通り過ぎていったんです。
――そこで一目惚れした、ということでしょうか。
佐藤 いや、そのときは一目惚れとかそういう感情はありませんでした。それなのに、出会いから30年以上経った今でもそのワンシーンを覚えているから、不思議ですよねぇ。
――佐藤さんは俳優研究所で過ごした下積み時代を「暗黒の20代」と話していますよね。
佐藤 20代で妻と出会えたし、俳優生活の恩人と呼べる人にも出会えました。自分にとって必要な時期だったと思っていますが、戻りたくはないですね。お金もなかったし、俳優になれるかもわからなくて精神的にきつかったから。