「僕はラジオというメディアがすごく好きなんですね。視覚情報がないぶん、想像力が豊かになる。情報過多の時代に、音しかないことが、かえって新鮮で心地いいんです。以前からラジオの仕事をやってみたいと思っていたので、NHKから声をかけていただけたのは嬉しかった」

 NHKのFMおよびラジオ第一で放送されて好評を博した『岡村靖幸のカモンエブリバディ』が、このほど書籍化された。2019年から21年にかけて、13回にわたって放送された内容を再構成。読者は番組を追体験できる。

 コンセプトは「挑戦」だ。

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「ゲストの方から僕がいろんなことを習って、挑戦する姿をそのままドキュメントにしたら面白いと思ったんです。悪戦苦闘する様子も含めて、楽しんでもらえたらと」

 俳人の神野紗希さんから俳句を習い、歴史作家の河合敦さんから歴史を学んで、アナウンサーの加賀美幸子さんからは言葉の極意を教わった。大貫妙子さんと仕事や人生について語り合い、ケラリーノ・サンドロヴィッチさん、犬山イヌコさんとコントに挑戦。満島ひかりさんとはポエトリーリーディングに挑んだ。

岡村靖幸さん

 満島さん、斉藤和義さんの回では、それぞれ番組内で曲作りにチャレンジした。無事に完成する保証はなく、リスキーな試みにも思える。

「安全運転というか、無難な内容じゃリスナーや読者は楽しくない。うまくいくかいかないか、破綻するかしないかギリギリの感じが伝われば、企画として成功なんだと思います。ゲストは才能のある方だし、何とかなるという勝算はあったんですけどね」

 ライムスターの宇多丸さんとラップで番組のジングルを作った回では、岡村さんが積極的に「脱線」し、ゲストの宇多丸さんが必死に番組としての着地点を探るという、主客転倒の事態にもなった。

「宇多丸さんはギャラクシー賞をもらっているくらいのラジオスターだし、真面目ですから、何を喋ってどう進行するか、頭の中でシナリオができている。僕はあえてボケてみせて、バランスを崩そうとした(笑)。結果的に、とても面白い内容になりましたね」

 書籍化にあたり、「ボーナストラック」として小林克也さんとの対談も収録された。

「中学生のころ、小林さんの『POP IN POPS』という番組を聴いていました。当時、洋楽に関してはラジオが唯一の情報源だったんですね。ものすごく影響を受けていると思います」

 音楽番組に限らず、小学生のころから熱心にラジオを聴いてきたという。

「特に『オールナイトニッポン』が好きで、一部、二部ともに毎日録音して聴いてました。印象に残っているのは、タモリさん、中島みゆきさん、桑田佳祐さん、吉田拓郎さん。あと、やはりビートたけしさん。僕がかつて刺激を受けたように、『カモンエブリバディ』で若い人たちに何か伝わるといいなと思っていたんです。またラジオの仕事をするチャンスがあるなら、ぜひやってみたいですね」

おかむらやすゆき/1965年、兵庫県生まれ。19歳で作曲家として活動をスタートし、86年に「Out of Blue」でデビュー。「岡村靖幸 2023 SUMMER TOUR『テクニカルサポート』」を7月8日にJ:COMホール八王子で、7月22日にKT Zepp Yokohamaで開催。