「長い人生で“夢のようだ”と思った瞬間が、僕には3回あります。最初は東映の研修生になって初めて行った撮影所で憧れの大スターたちを見た時。次は香港映画のオーディションに合格して出演発表の会見でたくさんのフラッシュを浴びた時。そして『帰って来たドラゴン』(74)をひっさげて帰国したら帝国ホテルで大勢の記者に出迎えられた時――。それで今回、俳優業60年記念の映画を作ろうとなって、テーマを“夢”にしようと思い立ったんです」
そう語る倉田保昭さんは、80歳にして現役のアクション俳優だ。若くして香港にわたり、数多くのカンフー映画に出演。ブルース・リーと親しく付き合い、ジェット・リーやジャッキー・チェンとも共演した。さらに後進の育成にも尽力。このたび公開される主演作『夢物語 The Living Dragon』でメガホンを取ったのも愛弟子たちだった。坂本浩一、下村勇二、谷垣健治。日本のみならず国際的に活躍しているアクション監督たちだ。
「皆、快諾してくれたのはいいけど忙しそうでね。しばらく日本に帰ってこないとか、半年は体があかないとか言われて。一時はどうなることかと思ったよ(笑)」
本作は、3人の監督がそれぞれ脚本から手掛けた短編3本からなるオムニバス映画。共通するのは、主演:倉田保昭、テーマ:夢、そして比類なき高いアクション水準を備えていることである。
「僕はこれまでほとんどスタントを使っていないけど、真夏に空調のない倉庫内での殺陣シーンはさすがに心配で相談したら、坂本君は『いえ、倉田先生にやっていただきます』と容赦がなかった(笑)。それで言えば、下村君から出たお題は、『空手の連続立ち合いをノーリテイクで撮ります』だったし、谷垣君に至っては『ロケ先の香港中を走り回ってもらいます』だからね。つまり、今の僕の偽りのない姿を撮りたいと言うわけ。年老いた、ちょっと情けない姿も含めて。それは僕も全く同じ気持ちだったけど……」と、今回の撮影がかなりチャレンジングなものであったことを明かす倉田さん。その結果は、ぜひ自身の目で見届けていただきたいが、少なくとも、こんなにキレのある80歳は……。
「いないでしょうねえ、この歳でこんなことをしている人は。でも思い返せば、それが僕の生きる道でした。海外で俳優をしようなんて誰も思わない時代に香港映画界に飛び込んだ。それから鍛錬を積んで、アクション俳優であり続けることにこだわってきた。まあ、この世代ならではのハングリー精神の賜物なのかな。今もそれは変わりませんけどね」
だからこそ本作では戦う自分の姿で、一人でも多くの人を元気づけたいと言う。
「そもそもアクション映画は、弱者が強者に勝つから面白いんです。一見、勝ちそうにない主人公だからハラハラする。思わず応援してしまう。すると形勢が逆転。それが醍醐味です。そういう意味では今の僕なんて、うってつけでしょう」
盟友サモ・ハンの特別出演も見どころだ。
「彼とは毎日のようにメールをやり取りする間柄。会えば必ず一緒に食事もします。それでも今回オファーをしたら、どんな役か一切聞かずに承諾してくれた。これは嬉しかったですね」
本気のアクションに託すもの。通底する師弟愛や盟友との絆。夢物語に終わらない倉田さんの物語は続く。
くらたやすあき/1946年、茨城県生まれ。66年デビュー。70年に香港に渡り、ショウ・ブラザーズ作品をはじめ数々の映画に出演、「和製ドラゴン」と称される。帰国後は『Gメン’75』などで人気を博す。76年に倉田アクションクラブを創設、アクション界の人材育成にも貢献。
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映画『夢物語 The Living Dragon』
7月17日公開
https://yumemonogatari.com/




