「成長してない」との声もあるが…
初めてのセンバツで全国制覇、2年生の夏はベスト4。新チームの主将にも任命され順風満帆の前田だったが、待っていたのは予期せぬ落とし穴だった。
対戦相手の力量によってギアを上げ下げする投球術にも磨きがかかった昨秋大阪大会決勝・履正社戦、前田は珍しく初回からフルスロットルで投げ続けていた。相手が最大のライバルゆえつい力が入ったのだろう。
ところが終盤に入って、右脇腹に痛みが走る。この履正社戦は9回を完封して7-0と勝利したものの、その後の近畿大会、連覇を目指した明治神宮大会では、あれほど制球が安定していた前田がコントロールを乱し、四球を連発するシーンが目だった。
前田は、この肋骨のケガを公表していなかったが、今年春のセンバツ直前、情報を得ていた私の問いにようやく事実を認めた。
「履正社戦の後半に、右の肋骨を痛めました。それからは投げない期間も作って身体を治すことに専念して、試合(近畿大会、明治神宮大会)が近づいたら徐々に投げ始めるという状況でした。ごまかしながら投げていました」
完治のメドがつくまでケガを公言しないことも「わざわざ弱みを見せる必要はない」という世代ナンバーワン投手としての矜恃だったのだろう。
それでも3年春のセンバツではストレートが140キロに届かないことも多く、ベスト4に進出しても前田に対しては「成長していない」「完成されていて、のびしろがない」という厳しい評価も聞かれた。
「結果を残せなければ、そこまでの選手ということ」
1年秋から大阪桐蔭でエースを張り、早々に世代ナンバーワンの称号も手にしている。今秋のドラフトでも1位指名が確実視される前田だからこそ、高校野球ファンの目は厳しくなる。新しい季節が訪れる度に前田の成長を実感できなければ、物足りなさを痛感してしまうのだ。
「求められているものが高いのは自分でも分かっている。結果を残せなければ、そこまでの選手ということ。周りは良いことも、悪いことも言うんですが、自分のスタイルを貫いていきたい」(前田)