「ロリータ、やめたら?」
それ、私にとっては死刑宣告のようなものです。
会う前は普通に会話のやりとりができていても、実際に私を見た途端、高圧的になる男性は多かった。「32歳、ロリータ」って、最低限の礼儀すら不要!とばかりに邪険にしていい属性なんでしょうか? 恋愛関係になるかもしれない相手に初対面で赤ちゃん言葉で話しかけるなんて、しないでしょう“普通〞は。
そもそもロリータの私も、ナースの私も、どちらも私。どちらも同じ「青木美沙子」というひとりの人間です。なのに、ナースの私には飛びついても、ロリータの私には、まるでそのへんに落ちている小石みたいな扱いを平気でする。ロリータへの偏見の根深さを思い知りました。私はこの偏見を減らしたくて活動してきたのに。会った瞬間に豹変する男性の態度にも、ロリータへの偏見をぬぐい去れない自分の力不足にも、ダブルでショック……。
すっかり疲れはてました。このまま“私のまま”で婚活しようとしたら、きっと毎回ひどく傷つく。いちばん大好きなファッションを着ているだけなのに、ロリータを広めるために一生懸命活動してきたのに、こんなにも自分を否定されて、なんのために生きているんだろう?とすら思ってしまいました。じゃあ、婚活のために己を捨てて、ロリータを封印する……?
その瞬間、答えは出ました。
ロリータを封印なんて、絶対にしない!
私にとってロリータは、出会ったその日から私を夢中にさせ続ける、唯一の魔法。幸いにも私は、そのロリータを生業とすることができています。その喜びを捨てるくらいなら、私が私でいられなくなるなら、たとえ恋愛や結婚ができたとしても、ちっとも幸せじゃない。私の芯にあるものを捨ててまでつかむほどの価値を、私は恋愛や結婚に感じられないんだ。
そう気づいて、私は婚活を卒業しました。あとになって思うと、私自身が年齢の呪縛にかかっていたのです。