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 すると、ここから運命の歯車がまわり始めます。1カ月もたたないうちに、テレビ番組出演のオファーが届きました。話題の女性をドキュメンタリー形式で紹介する「7 RULES(セブンルール)」からでした。すぐに打ち合わせに参加すると、海外取材を含め、1カ月半も密着して撮影されることがわかりました。それも、さっそく明日から。それだけでもびっくりなのに、さらに特大のサプライズが待っていたのです。

「年齢を公表してください」

 番組から突きつけられたオーダー。私にとっては「過酷」のひと言でした……。

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 当時、ロリータをめぐる空気はほんっっっっっとうに悪くて、趣味で楽しんでいるロリータちゃんへの視線も冷たいのに、ましてや職業・ロリータモデルの私には「25歳過ぎたおばさんのくせにロリータとかw」なんて、とにかく厳しい言葉が投げつけられていました。「25歳以上はおばさん」と普通に言われるほど女性の年齢にシビアな世の中で、少女性の強いロリータファッションは特に目立つのかもしれない、けれど私、何か悪いことしている? つねに葛藤がありました。20代後半からずっと。

 だからそれまで「年齢非公表」で通してきました。Wikipediaの「青木美沙子」のページに生年月日が記載されたら、わざわざ自分で消しにいっていたくらい……(笑)。ロリータの地位を上げたいと願っていたのは本当なのに、自分のなかでも「25歳を過ぎてロリータモデル」というアイデンティティに、劣等感を抱くようになっていたのです、いつの間にか。

 

 そんな私が、実年齢を公表する……? 

 迷いに迷いました。承諾して年齢をオープンにして番組に出演するか、断って年齢非公表を貫き通すか。

 迷ったあげく……私は前者を選びました。私はロリータをもっと広めるために、本当の姿を知ってもらうために、メディアでその生き方を取り上げてほしい。その願いが今かなおうとしているのに、ここで断る選択肢などないはず!

 それは大きな決断でした。私が「34歳、ロリータ」としてお茶の間に登場することで、もしかしたら、私の願いとは逆に「ロリータって変わった人なのね」と思われてしまう可能性もあるのですから。これは、賭け。どちらに転ぶか五分五分の、一か八かに賭けることにしたのです。