年齢を公表したら、人生が変わった
テレビの撮影って、たくさんのスタッフに囲まれて行うイメージがありましたが、ふたをあければ、私とプロデューサー兼カメラマンの1対1。全スケジュールを提出して1カ月半、とにかくずうっと一緒でした。正直、ストレスでした……(笑)。なにしろ当時はまだ、カメラを向けられ続けるというテレビ取材に慣れていないころです。緊張で自律神経が乱れ、眠れなくなるほどでした。
撮影中も不安しかありません。はたして30分の番組を成立させられるほど、私におもしろい要素があるだろうか、印象的なことが起こるだろうか。「34歳、ロリータ」の姿を全国へさらすことへの不安はもちろん、これまで話したことのない恋愛観を吐き出すことでファンからも嫌われてしまうかも、という恐怖さえ感じていました。オファーを受けたことを後悔しました。
ただ、自分のロリータ人生には後悔がありません。ロリータへの思いは誰にも負けない、という自信だけはずっとあります。だから、私という人間を通してロリータを知ってもらうきっかけになれば……どんな批判を受けようとかまわない、私が先頭に立って受け止めよう! そう気力を奮い立たせ、気持ちを切り替え、放送の日を待つことにしたのです。
運命の30分間が過ぎたとき、気づけば涙を流している自分がいました。私のロリータ人生、思いのすべてが詰まった映像に仕上がっていました。メディアでは、ともすればキワモノとして扱われがちなロリータですが、ひとりの女性として、ロリータを生きてきたその人生をフィーチャーしてくれたことに、感極まってしまったのです。
反響も予想以上でした。放送前に抱いていた不安はなんだったのかというくらい、たくさんの方々から共感の声が寄せられました。
「歳をとることは怖くないと思えた」
「世間にとらわれず、好きなことを貫き通す姿に勇気をもらえた」
「大人になってもぬいぐるみが大好きなことを隠していたけど、そのままでいいんだ」
「好きなものを好きと堂々と言える世の中になってほしい」
ロリータからもそうでない方からも、30~40代の女性を中心に、非常に多くのメッセージが寄せられました。そのひとつひとつを抱きしめたかった。ロリータの本当の姿を広めたいと思って出演したけれど、ちゃんと“芯〞の部分が伝わっていた、それが震えるくらいにうれしかったのです。