そして、私はもうひとつのことに気づきました。ずっとコンプレックスに感じていた年齢を表に出すことで、たくさんの方々の心を動かすことができたのです。私みたいに“年齢の呪縛”にかかって苦しんでいる人たちが、世の中にはいる。私が弱みだと思っていることでも、発信することで誰かを勇気づけ、価値をもたせられるのかもしれない。だったら積極的に伝えていこう。放送前とは180度、考え方が変わってしまいました。
変わったのは、私を取り巻く状況も、です。放送後、さまざまなメディアから取材依頼が殺到しました。それまでの私の主戦場は、ロリータ専門誌、それが廃刊になってからは、ロリータを扱うお店のサイトや自分のブログ、SNSでした。
それが、全国新聞に男性週刊誌、ネットニュースメディア、生花店のウェブコラム、看護師の求人サイトなど、規模も読者層もさまざまなメディアから、私の話を聞きたいとオファーが届いたのです。“普通〞の人生ではないけれど。“世間一般〞からはみ出してはいるけれど。きっと、そういう世の中の圧力や呪縛から抜け出したいと思っている人はたくさんいて、私の人生に、何か引っかかるものを感じてくれたのかもしれません。取材されてできた記事はというと――
●30代でもロリータを貫く生き方
●ロリータと看護師の二足のわらじをはく働き方
●ロリータがマッチングアプリで婚活したら
●コロナ禍で実感したデュアルジョブの魅力
●父と私
などなど。ひと言でいえば「女性の生き方」(たまに父との取材が入ったりしていますが……)。それが恋愛だったり仕事だったり、メディアのスタンスや記者の方の視点によって、さまざまな“私〞が描き出されます。そうして「国際女性デー」のイベントに招かれたり、ニュース番組にコメンテーターとして呼ばれたり。念願のメディア露出がかなってありがたいなあと思う一方で、まるで「鋼の女」のような、強い女性としてとらえられることには戸惑うことも……(笑)。
だって私は「好きなこと(ロリータ)を貫きたい」と思って生きてはいるけれど、けっして強い人間ではないから。それに「女性は強くあるべき。みんな、強くなろう!」なんてことも思ってはいないのです。ただただ「自分の人生の主役は自分で、誰になんと言われようと楽しんだ者勝ち!」ということだけ。
どうも「女性も働いて自立しよう」「常識にとらわれずに生きよう」「多様性を尊重しよう」といった世の流れがあって、そこに私がすっぽりハマるように見えるみたい。「はみ出す力」もよく使われるフレーズです……(笑)。私自身の生き方は変わっていないけれど、評価されるようになった。世の中の流れに私の生き方がマッチするときがきた、のでしょうか。ちょっと不思議な気もします。