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「僕にとって和彦さんは、いろんな問題を抱えているなかでの唯一の理解者で頼りにしていました。しかし、和彦さんにとってセンチメンタルな絵画を盗ったことを知られたら、盗ったことは許してもらえても、今後相手にしてもらえない。突き放されると思った」(被告人質問での証言)

父親は「大悟はベンツに乗っていた」

 なぜ元伯父である和彦さんだけが理解者なのか。それは彼が事件までに、周囲の者たちを傷つけ、また裏切り続けてきたからだろう。内妻だけでなく、女性への暴力は過去にもあった。父親が調書で明かす。

「2015年に当時交際していた女性に暴力を振るい怪我をさせ逮捕された。このとき300万円払う約束で示談し不起訴になった。大悟に頼まれ、後から返す約束で示談金全額を出したが、70万円しか返さず、にもかかわらず大悟はベンツに乗っていた」(父親の調書)

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 さらに父親は「交際相手や家族、職場に対して大悟は数々の犯罪を繰り返した」とも述べる。大悟被告が勤務先で盗みを働き逮捕されたころ、友人の財布から金を抜き取っていたことも発覚した。さらには別の知人から“大悟にカードをスキミングされて身に覚えのない請求がきた”と連絡を受ける。これで父親は「心底呆れ、もう関わりたくないと思った」という。それでも悪行は止まらなかった。大悟被告は、父親が所有している別宅に空き巣に入ったのだという。

「ティーカップや毛皮のコートなどがなくなっていた。大悟に連絡すると『家を見に行ったら、窓が壊れていたから中に入った。警察が来たら僕は自殺する』と返事があった。『被害届を取り下げてほしい』と言われたが、断ると『親父を刺す。家まで殺しに行く』と言われた」(父親の調書)

 このため父親は大悟被告に、分籍することを告げていた。父親は息子をこう評する。

「ブランド物へのこだわりがあり、赤坂のマンションに住み、大物との付き合いを自慢していた。外面が良く、関係の近い人には高圧的」(父親の調書)

 母親の姉である旬子さんの家の近所に住んでいた者も、調書にこう語る。