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「スタジオジブリでさえ北米では小規模公開の作品です…」それでも日本アニメ映画が海外で異常な興行収入を稼ぎ続けている“納得の理由”

「スタジオジブリでさえ北米では小規模公開の作品です…」それでも日本アニメ映画が海外で異常な興行収入を稼ぎ続けている“納得の理由”

2023/09/29
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「スタジオジブリでさえ……」

 しかし映画興行に限れば、そんな人気は長らく日本アニメには無縁だった。各国のアニメイベントに何十万人のファンが押し寄せても、アニメ映画の上映は数館から数十館で、観客はトータルで数万人というケースがほとんどだった。世界の映画興行は米国の巨大エンタテイメントの支配力が強く、広い大衆性が求められ、映像ビジネスでもとりわけ海外進出が難しい分野なのである。若者の間で人気が高い日本アニメでも、「所詮はニッチ」と相手にもされず、そもそも上映機会さえ少なかった。

 それは巨匠・宮崎駿を擁するスタジオジブリですら同じだ。2003年のアカデミー賞長編アニメーション映画賞に輝いた『千と千尋の神隠し』は当初の上映劇場数は百数十スクリーン、アカデミー賞受賞後も700スクリーン余りに過ぎない。ディズニーやドリームワークスのアニメーション映画が3000スクリーンから4000スクリーンで上映されるのとは雲泥の差だ。『千と千尋の神隠し』は全米での興行収入も1000万ドルほどで、ハリウッドの大作アニメーションが軽く1億ドルを超えるのとは対照的だった。

『千と千尋の神隠し』公式サイトより

 北米で日本アニメを多く手がける配給会社GKIDSの社長のデビッド・ジェステッド氏は、今年3月に開催された新潟国際アニメーション映画祭のトークで「スタジオジブリでさえ、北米ではアートハウス(良質で小規模公開の作品)とみなされます」と、そのマーケティングの難しさを語っていた。人気はあっても、映画業界ではメジャーとみなされない。それが日本のアニメだった。『鬼滅の刃』はそれを打ち破った。

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『鬼滅の刃』の成功は、突然だったわけではない。実はここ数年、『僕のヒーローアカデミア』、『ドラゴンボールZ』といった日本アニメの劇場シリーズが、北米興行ランキングの上位にしばしば登場するようになっていた。少ないスクリーン数での驚異的な動員は、米国の映画メディアで「サプライズ」とたびたび報じられたが、何度も続けばそれはサプライズでない。