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「スタジオジブリでさえ北米では小規模公開の作品です…」それでも日本アニメ映画が海外で異常な興行収入を稼ぎ続けている“納得の理由”

「スタジオジブリでさえ北米では小規模公開の作品です…」それでも日本アニメ映画が海外で異常な興行収入を稼ぎ続けている“納得の理由”

2023/09/29
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日本アニメ映画が世界で稼げるようになったワケ

 理由のひとつは、日本アニメの配給会社が米国の映画業界で新たなマーケティングを生み出したことにある。小規模な興行を最大化させるために公開に合わせてイベントを実施し、全国同時に中継をしたり、特典グッズを配ったりする。映画鑑賞に付加価値をつける独自の手法をとった。

 日本アニメの人気が高まって興行規模が大きくなっても、熱度の高い独自のファンマーケットを生み出し続けている。テレビシリーズを前提とした続編映画をヒットさせるのは難しいとされるなか、『鬼滅の刃』や『僕のヒーローアカデミア』、『ドラゴンボールZ』の劇場版が観客を大量動員する理由でもある。日本アニメは、米国の映画興行の常識を突き崩そうとしている。

 状況が変わった理由は、他にもある。ひとつは配信プラットフォームの普及だ。

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「クランチロール」公式サイトより

 Netflixやアマゾンプライムビデオ、さらに日本アニメ専門のクランチロールといった米国の巨大配信プラットフォームを通じて、過去10年間で日本アニメのファンはかつてない規模に膨らんだ。低価格で、簡単に、大量の作品にアクセスできるようになり、これまで日本アニメを知らなかった人たちをファンに変えた。Netflixは「2億人を超える同社のユーザーのうち半分以上が、過去1年間に“アニメ”を視聴した」と述べている。

 もうひとつはソニー・ピクチャーズの役割だ。ハリウッドメジャーの一角である同社が、日本アニメ専門の米国配給会社ファニメーションとクランチロールの2社を相次いで傘下にしたことで(両社は2022年に経営統合)、拡大するニーズを受け入れる大規模なスクリーン確保や広告、メディアの露出を用意した。

「ソニー・ピクチャーズ」公式サイトより

 海外での状況は、国や地域によって違う。北米の成功は米国文化に根ざしており、場所が変わればそれも変わる。ヨーロッパも日本アニメの人気が高い地域だが、たとえばフランスで最もヒットした日本アニメ映画は『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』でなく『ONE PIECE FILM RED』である。