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「スタジオジブリでさえ北米では小規模公開の作品です…」それでも日本アニメ映画が海外で異常な興行収入を稼ぎ続けている“納得の理由”

「スタジオジブリでさえ北米では小規模公開の作品です…」それでも日本アニメ映画が海外で異常な興行収入を稼ぎ続けている“納得の理由”

2023/09/29
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日本の興行収入を上回る“中国”

 そのなかでいま巨大なマーケットで注目されるのが中国だ。ここでの主役は新海誠監督である。その最新作『すずめの戸締まり』は、23年3月24日に中国で全国公開されると週末興行で2週連続1位となり、中国で公開された日本映画の興行収入歴代1位の記録を塗り替えた。156億円の興収は、日本の147億円を大きく上回る。

『すずめの戸締まり』公式サイトより

 これまでも日本での興行収入を海外が上回った例はあるが、国民的ヒット作では前代未聞。さらに中国の映画チケット価格が日本よりも低いことを考えれば、中国には日本を遥かに上回る『すずめの戸締まり』の観客がいることになる。

『THE FIRST SLAM DUNK』も、2023年に中国で大ヒットした作品である。バスケットボールを題材にした往年の人気漫画を原作者の井上雄彦が監督となって、再アニメ化した。かつて東アジアで一大旋風を巻き起こした作品のリブートが評判となり、こちらも5億6000万元(約108億円)と大きな数字を残す。しかし当初は『すずめの戸締まり』を超える勢いとされていたが、最終的には及ばなかった。新海誠の人気は高いが、知名度やファンの年齢層の幅広さは歴史の長い『SLAM DUNK』のほうが上だったはずだ。

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『THE FIRST SLUM DUNK』公式サイトより

 ここに中国での映画ヒットの鍵がある。『THE FIRST SLAM DUNK』の観客は大都市が中心だったが、『すずめの戸締まり』は現地では3線都市、4線都市と呼ばれる中小都市(編集部注:中国では経済誌『第一財経』と同媒体が運営するシンクタンクが都市の分類・ランキングを行っている)でも確実に観客を動員した。実は新海監督は、映画公開に合わせて北京と上海に訪れて数多くのメディアに姿をだした。これが大きな効果を発揮した。新海監督はやはり中国で大ヒットした『君の名は。』公開時にも中国を訪れている。時間と手間をかけた現地のファンとのコミュニケーションが功を奏したのである。『THE FIRST SLAM DUNK』も公開前に大掛かりなイベントはあったが、スタッフが現地に赴くまでにいたらなかった。