1ページ目から読む
2/4ページ目

韓国ではツキノワグマが絶滅状態

 しかし、より森が似合うのはツキノワグマである。爪がヒグマほど湾曲していなくて体重も軽いので、木に登るのはずっと上手だ。ヒグマは高山や砂漠、ツンドラ地帯など、さまざまな場所でも生きていけるが、ツキノワグマは森でしか生きていけない。

 標高が高すぎず、平地にすぎず起伏に富んだ、ちょうど日本の本州のような中程度の標高で深い森に適応しているのがツキノワグマなのである。

 なお、私たちがツキノワグマと呼んでいるクマは海外ではアジアクロクマと呼ばれている。生息域は、西はイランから東は日本、北はロシアで南はマレー半島である。

ADVERTISEMENT

 生息域は広いが、数はどんどん減っていて、韓国では絶滅状態になっており、遺伝的にはほとんど同じとされているロシアや北朝鮮のクマを再導入して、現在では南部の智異山を中心に約50頭前後が生息している。韓国でのツキノワグマは、まるで日本のトキのような存在といえるだろう。

 北米大陸にはアラスカからメキシコにいたるまでアメリカクロクマが生息しており、こちらは世界でヒグマに次いで数が多い。姿はツキノワグマとよく似ている。体はアメリカクロクマのほうがひと回り大きいが、性格はツキノワグマよりおとなしい。

マレーグマとナマケグマは密猟で数が減少傾向

 クマの中で最も人気があるのがジャイアントパンダだろう。ジャイアントパンダは中国語では「大熊猫」と書かれるし、あの独特の脱力感のある姿のせいで、「クマなの? ネコなの?」といわれるが、クマ科である(ちなみに「熊猫」と中国語で呼ばれるレッサーパンダはレッサーパンダ科でクマとは違う。レッサーパンダが熊と猫に似ているから熊猫と呼ばれるようになり、それの大きいバージョンということでジャイアントパンダが「大熊猫」と呼ばれるようになったらしい)。

 ジャイアントパンダは中国の四川省のごく一部に生息しており、野生の生息数は2千頭ほどである。いくつかの地域に分かれて生息しているため、個体同士の交流が難しく、野生環境での生息はかなり厳しい状況にある。

 南米大陸のアンデス山脈の高地に発達する、雲霧林と呼ばれる湿度の高い森にはメガネグマがいる。こちらはめがねをかけたような顔の模様からその名前がついた。ただし、個体によって顔の模様には違いがあり、顔の半分にしか模様がなかったり、そもそも顔に模様がなかったりする個体もいる。

 そしてアジアにはマレーグマとナマケグマがいる。マレーグマは東南アジアの熱帯雨林に住んでいて、クマの中では最も小さく、果実や昆虫を食べて暮らしている。ナマケグマはインドやスリランカに生息している。主食はシロアリで、アリ塚を壊して舌を使いながらアリを吸い込む。どちらのクマも密猟などで数を減らしている。