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奇抜な髪色だった宗佑磨とパンチパーマだった頓宮裕真…2人の“ゆうま“の物語

文春野球コラム ペナントレース2023

2023/08/19

 夏になるといろいろと昔の事を思い出す。まだ若かった両親や弟と旅行に行った事、クラブ活動の練習で汗を流した事、小さな家の庭でいろいろな植物を植えて育てた事、そして、夕立の中で飼っていた子犬を連れて散歩した事。そうだ、電車に乗って高校野球の試合も観に行ったし、自転車に乗って九州にも行った。楽しかったよな。

 でも、そんな時、割り込んで来る異なる種類の思い出もある。大学浪人中に予備校帰りの中之島でぼんやりと川を見ながら途方に暮れた事や、勇気を振り絞って好きだった娘を誘って大文字を見に行ったのに、自業自得で嫌われてしまった事。とぼとぼと鴨川を歩いて帰ったよな。そう、思い出には白いものだけでなく、黒いものもあるのである。

 そうして考えていると何だか酷く懐かしくなって来たので、パソコンに取り込んで保存してある古い写真を探してみる。いやいや俺だって、あの頃は、もうちょっとイケてた筈……げ、何やこのファッション。バブルやったからとかそんなレベルでなく、これはあかんやろ。大丈夫なのか、こいつ。

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宗は頻繁に髪形が変わり、頓宮はパンチパーマだった

 若い頃は悩みが多い。いや、実際には年を取ってからも悩みは尽きないのだが、大きな違いがある。歳を取った人は、自らにもう人生の伸びしろが余りないので、悩みながらも、どこかでここから努力しても状況は大きく変わらない、と諦めている事も多い。でも、若い人はまだまだ自分自身に伸びしろがあるからこそ、努力して成長すれば、問題はきっと解決する筈だ、と考えがちだ。しかしだからこそ、悩みの矛先が自らに向かい、自らで自らを傷つける方向に働いてしまう事がある。

 自分は何者かになりたいのに、何者にもなれない。そんな鬱屈した思いは、時に人を奇抜なファッションや行動へと向かわせる。変わった格好や行動をすれば、それだけで他人と何かしらを差別化できるからだろう。一言で言えば、「目立てる」訳だ。

 だからこそ、時に、奇抜なファッションや行動は、若い人の特権である以上に、その人の心の迷いの表れであったりする。なので、大学で教える様になってからは、学生さんがどんなに変わった服を着ていたり、奇抜な行動を取ったりしても暖かく見守る事にしている。そうか今、君は「ここに自分がいるぞ!」と叫んでいるんだな。先生、ちゃんと見ているから安心していいぞ。さあ、とりあえず集中して、授業のノート取ろうか。

 プロ野球選手、その中の若手は、ちょうど大学の学部生や大学院生と同じ年ごろの人達であり、学生達以上に遥かに過酷な競争の下に置かれている。だからこそ、そこには様々なストレスがあり、時に奇抜なファッションやパフォーマンスを見せたくなるのも、よく理解できる。

 でもそんな彼等もやがて、経験を積み、一定の成績を上げると落ち着いていく。そう、オリックスが強くなってから応援を始めた人は、宗選手の髪の毛がある時期、金色になったり緑色になったりしていた事や、頓宮選手が「パンチパーマ」で入寮し、「第二のパンチ」という、よくわからない売り込み方法を球団にされていた事は、きっと知らないに違いない。

(左から)頓宮裕真、宗佑磨
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