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「なぜこの作家がつまらなくなったか」という長文のレポートを持参したら即スカウト…30年、官能小説を作り続ける“フランス書院編集長(51)”の超ユニーク人生

ナゾの出版社「フランス書院」インタビュー #2

note

玉川 そうですね。僕も入社してから「こんなに若い女の子の人気がないものか」と驚きました。「若い子は何かと気を使って機嫌を取らないといけないから面倒くさい」と感じる読者が多いようです。癒やしを求めて、キャバクラよりもスナックに行く心理に近いのでしょう。

――相手に委ねたい読者が多いんですね。

玉川 ただ、こちらを振り回すようなキャラはそれはそれで不人気です。誘惑系といっても小悪魔っぽいヒロインではなく、男性側を立ててくれるような控えめで優しいヒロインが支持されます。「そんな女性が現実に存在するわけはない」と言われたらその通りですが、官能小説の世界はファンタジーですからね。

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――そういえば、近年はアニメや漫画でもヒロインの母親キャラの人気が出ることが多いですよね。

玉川 中高年が未成年に手を出す事件やパパ活などが悪目立ちするだけで、実際のところ、ほとんどの男性は熟女のほうが好きなんじゃないかと個人的には感じています。

「ここは学校じゃありません」と新人作家を諭すことも

――何をエロいと感じるかは人それぞれだからこそ、作家さんとの打ち合わせが難しそうなイメージがあります。相手に「自分はこれがエロいと思う」と言い張られたら、どうしたらいいのか……。

玉川 賞の選考などデビュー前の時点で、エロに対する感性がある程度メジャーな作家さんかどうかは見極めるようにはしています。作家自身はそれがエロいと感じるとしても、せっかく目の前に神秘の女性器があるのに「男の股間はいななくように~」とか男性器がエレクトする描写に何ページも割くのは、多くの読者が求めるポイントからはズレています。

 ニッチな好みを持っている作家さんというのは存在しますが、「もともとニッチな官能小説というジャンルでニッチをやったら、売上はどうなっちゃうんですか」とお伝えし、理解していただいています。

 新人さんには「ここは学校じゃありません。書ける人を拾い上げて売っていきたいので、なんとかデビュー前に感覚を掴んでください」とも、よくお伝えしていますね。