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「なぜこの作家がつまらなくなったか」という長文のレポートを持参したら即スカウト…30年、官能小説を作り続ける“フランス書院編集長(51)”の超ユニーク人生

ナゾの出版社「フランス書院」インタビュー #2

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玉川 そうですね。「官能小説に詳しくはないが、出版業界に入りたい」と入社した社員もいます。あとからしっかり勉強してくれたら問題ないので、そういった人材も受け入れています。

好景気には「凌辱系」、不景気には「誘惑系」

――官能小説を全く読んだことのない初心者は、どんなふうに作品を選べばいいでしょうか?

玉川 官能小説は、強引に女性をモノにする「凌辱系」と、女性に優しく導かれる「誘惑系」のふたつに大きく分けられます。まずはどちらが自分の好みに近いか考えてみるといいんじゃないでしょうか。

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官能小説の多くは「凌辱系」か「誘惑系」に大別できる ©杉山秀樹/文藝春秋

――こうやって書籍を並べてみると、タイトルを見ただけで「凌辱系」か「誘惑系」か、なんとなくわかりますね。

玉川 誘惑系のタイトルは、ひらがなが多かったりして優しい印象です。一方の凌辱系はおどろおどろしい雰囲気です。

――凌辱系はタイトルが明朝体で……。

玉川 凌辱には明朝体が似合いますからね。

凌辱系小説『媚肉の供物【未亡人奴隷】』(紫艶) ©杉山秀樹/文藝春秋

――時代によってトレンドの移り変わりはありますか?

玉川 「フランス書院文庫 ヒストリア」として公式ホームページにもまとめていますが、「景気が良いときは凌辱系が売れる」と言われています。きっと男性がオラオラした気分になるのでしょう。逆に景気が悪くなると、癒やされたい人が多くなるから誘惑系の人気が高まります。

 今は誘惑系が優勢ですね。とはいえ、どんな時代になろうと凌辱系/誘惑系が心底好きな読者というのはいます。特に凌辱系はファンの熱量が高くて、同じ作品を紙と電子の両方で買ったり、分厚い作品でも喜んで手に取ってくれる。作品に長文で感想を寄せてくれる読者の数も、圧倒的に凌辱系のほうが多いですね。

「熟女は52歳までならイケるんじゃないか」

――近年、チャレンジした作品はありますか?

玉川 「若祖母」に初挑戦しました。

――祖母!

「おばあちゃんじゃないか」とツッコまれた、チャレンジ作『私でよろしければ 義母25歳、若祖母45歳と』(秋芳さつき) ©フランス書院

玉川 周囲には「おばあちゃんじゃないか」とツッコまれましたが、おかげさまで売れています。妻の母、つまり義母に初めてチャレンジしたときも周囲に「一体いくつなんだ」と言われましたが、いまや人気ジャンルです。どこまでを熟女と定義するかは冒険ですが、自分としては「52歳までならイケるんじゃないか」という手応えがあります。

――最近の50代女性は見た目も若々しいですしね。フランス書院の読者のあいだでは、若い女の子よりも熟女のほうが人気なんでしょうか?

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