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東海道本線“ナゾの湘南発祥の駅”「大磯」には何がある?

夏だ、海だ、湘南だ#1

2023/07/31
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 夏である。そして、夏といえば海だ。海といえば湘南だ……などという屁理屈をこねて、前回は湘南台駅を訪れた(東急と直通した小田急線“ナゾの終着駅”「湘南台」には何がある?)。

 結論からいえば、湘南台は“湘南”を冠する駅とはいっても内陸で、夏の海と空を期待するような場所ではなかった。最初から分かっていましたよね、と言われたら反論の余地はないし、湘南台とて広い意味では湘南の一部であるのは間違いないのだろう。が、多くの人がイメージするであろう“湘南っぽさ”とはだいぶかけ離れた町であったことは事実だ。

 ならば、いっそのことザ・湘南な町を訪れてみよう。変な屁理屈をこねずに、最初から王道の湘南へ……。と、ここで困ってしまった。湘南って、いったいどこからどこまでなのでしょう。

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 だいたいの人は、湘南といえば鎌倉とか江ノ島とか藤沢とか茅ケ崎とか、そのあたりを思い浮かべるのではないか。実際、そのあたりは実に湘南らしい。ならば、鎌倉や江ノ島が湘南の中心なのか。そもそも、湘南とはどこを中心として生まれたのだろうか。そう思って調べてみると、「湘南発祥の地」というのがあるらしいことがわかった。それは、大磯だ。

東海道本線“ナゾの湘南発祥の駅”「大磯」には何がある?

東京から約1時間…“ナゾの湘南発祥の駅”「大磯」には何がある?

 湘南に限らず、発祥の地というのは諸説あるうちのひとつに過ぎなかったり、中にはほとんど眉唾のようなものもある。複数の町が“発祥の地”に名乗りを上げて、互いにライバル視しているようなことも珍しくない。

 湘南がそれらに該当するかどうかはよくわからないが、いずれにしても大磯という町が湘南発祥の地と称していることは間違いないようだ。ならば、湘南らしさをいちばん感じられるのが大磯のはず。そんなわけで、今度こそ夏の湘南を体感すべく、大磯を目指したのである。

今回の路線図。東海道本線で東京駅からは約1時間、藤沢や茅ケ崎、平塚を抜け小田原の手前にある「大磯」
 

 大磯の町の玄関口は、大磯駅である。藤沢や茅ケ崎と同じ並びの東海道本線の駅だ。東京駅からは1時間とちょっと。七夕祭りで有名な平塚駅のひとつ先、小田原よりはいくらか手前の相模湾沿いに、大磯駅がある。1面2線の島式ホーム、北側は近くまで山が迫り、出入り口があるのは海に近い南側だけという、実にシンプルな構造の駅だ。