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オレンジ色に輝く瓦屋根と白壁を持つ三角屋根の小ぶりな駅舎は、大正時代の終わり頃に建てられたものだという。都心のターミナルとはひと味違う、のどかさと上品さを兼ね備えた駅舎は“湘南の玄関口”に実にふさわしい。
駅前広場も駅舎と同じく規模は小さく、向かい側にはカフェやギャラリー、土産物店の類いがいくつか並んでいるくらいだ。日常的な人の行き来はそれほど多くないのだろうか。
アーチをくぐって海を目指す
駅前広場の端っこには、「Oiso Beach」のアーチが掲げられている。その先は下り坂。坂を下っていくと、大磯の海に出るということだろう。なので、導かれるままにアーチをくぐって海を目指す。
「大磯迎賓舘」という名前がつけられた瀟洒なレストランの脇を抜け、お寺や大磯町立図書館などの間を通って坂を下る。ほどなく大きな道路と交差するが、その道は泣く子も黙る国道1号だ。言い換えれば、東海道。大磯の町は、古くは東海道の宿場町のひとつであった。
現在の国道1号は近世以来の旧東海道の後継といえる。ただ、すべてが重なっているわけではなくて、むしろ現在では違う道筋になっていることが多い。徒歩の時代の街道ではクルマの通る現代社会にそぐわないのでとうぜんのことだ。
ただ、中には昔のままの道筋を国道1号が辿っているところもあって、そのひとつが大磯付近。大磯の国道1号沿い、もちろんコンビニや金融機関が建ち並んでいてクルマがひっきりなしに行き交うという実に現代的な道ではあるが、その中にどことなく懐かしい香りが漂うのは、そんな刻んできた歴史からなのだろう。