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毎年数十人が「殺人スズメバチ」の犠牲に…「刺される人の共通点」と「刺されない絶対ルール」を教えます

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genre : ライフ, ライフスタイル, ヘルス

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この理由にはスズメバチの生活史が大きく関係しています。

スズメバチとのハチ合わせ――なぜ夏なのか?

例えばキイロスズメバチの生活は、4月の終わりごろ越冬(写真6)を終えて朽ち木や土中から出てきた女王蜂による造巣から始まります(写真7)。女王蜂は前年の秋にオスと交尾しており、腹部内の受精のうという小さな袋に精子を貯めており、それを使って受精卵を生み続けることができます。

女王蜂は、前年の晩秋にオスと交尾して腹部内にある受精のうという小さな袋に精子を貯蔵しています。たった1頭で巣造りを開始した女王蜂は、産卵の際にその精子を小出しにして使い受精卵を産むことができます。従って、産卵するたびにオスと交尾する必要がないのです。

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こうして始まった初期巣の大きさはピンポン玉を一回り大きくした程度で手のひらにものる小ささです。最初の働き蜂が羽化するまでの1カ月もの間、産卵、育児、巣造り、外敵防御など全ての仕事を女王蜂1頭でこなさなければならない、いわゆるワンオペ状態で「女王」とは名ばかりです。

この時期に寒い日が続いたり、梅雨が長かったりすると十分な餌を集めることができずに、人知れず廃絶してしまう巣が多いと考えられます。この単独営巣期には巣に近づいても何も起きないので、危険が忍び寄っていることには全く気付くことができません。

7月は働きバチが急増し、攻撃性がピークに達する

6月も中旬に入ると女王蜂にとって待望の小さな働き蜂が誕生します(写真8)。働き蜂の性別は全てメスでオスはいません。ハチの社会では、メスが受精卵から、オスは無精卵から発生するという原則があるのです。

ちなみに、刺針は産卵器官の一部が武器として変化したものなので、針で刺せるのはメスのみです。女王蜂にとって娘にあたる小さなメス働き蜂は、母親が担っていたリスクの高い仕事を分掌し、女王蜂は産卵に専念できるようになります。

このように女王蜂(生殖)と働き蜂(労働)の分業が成立すると巣は急速に成長します。7月には巣の大きさはソフトボールを一回り大きくしたサイズになり、成長の早い巣では小玉スイカ程度になっている場合もあります(写真9)。働き蜂の数も数十から百頭近くまで急増しており、知らないで巣に近づくと刺針による激しい防衛行動にさらされることになります。