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こどもたちに見せたくなるような企画だった

 こうしたなか、こどもが声を上げやすい環境をつくるための取り組みが進んでいるという。番組では群馬県で行われていた教職員などを対象とするトレーニングプログラムを取り上げ、「親戚のお兄さん役」が「男の子役」にキスをさせろと迫るロールプレイの寸劇を実演して、こどもが「いや」なことは「いや」と拒否してもいいと知ってもらうために取り組む活動を伝えた。

 こどもに対して、自分自身を大切にして、性暴力などとどう向き合うべきかを伝える活動をしている専門家が語る。

こどもが声を上げやすい環境作りへの取り組みを紹介(日本テレビ「news every.」7月26日より)

「女子も男子も被害に遭うということ。知っている人が加害者になるってことも多いということを伝えています」(J-CAPTA 木村里美ディレクター)

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 被害にあった側は悪くない。信頼できる大人に相談をと呼びかけていると番組は伝えていた。

 男性の若者や男児が性加害からどうやって身を守るか。万一、被害にあったらどうするか。それをシンプルに伝える、こどもたちに見せたくなるような企画ニュースだった。

 ジャニーズでの性加害は関係者だけの問題ではない。過去の問題でもない。今も同様に被害にあって苦しんでいるこどもがいる。これから被害にあう可能性があるこどももいる。そうしたこどもを守るための取り組みを伝えていこう。そんな気概に満ちた報道だったといえる。

「news zero」では有働由美子キャスターらが解説

 日本テレビは同じ日の夜ニュース「news zero」でもこのニュースを深掘りした。

 再び荻上チキ氏のインタビューをもとにして、スタジオで有働由美子キャスターと小栗泉解説委員長がパネルの図で解説していた。

有働由美子キャスター(右)と小栗泉解説委員長(日本テレビ「news zero」7月26日より)

 焦点は政府がまとめた男性・男児のための性暴力被害者ホットラインの設置などの緊急対策は、なぜ男性の性被害に特化したものになったか。

 それに対して、小栗解説委員長の説明が分かりやすかった。

 男性が性的な被害があったと訴えても「そんなことあるはずない」とか「男なら触られて嫌じゃないでしょ」などと言われてしまいがちで、本人も言い出しにくい背景があることを説明した。

 実は夕方の「news every.」では、荻上チキ氏がインタビューで自身が受けた性被害を「性的いたずら」と表現し、筆者には被害をやや矮小化するような表現で語ったように見える編集に感じられて少し気になった。言葉の使い方に日頃から神経を払っている荻上氏がこの“いたずら”という言葉を説明なく使うことは考えにくいように思え、本人がそのまま口にしたのだろうかと疑問に感じていた。

「news zero」はこうした疑問に答えるように、荻上氏は10代の頃に男性教師から性被害を受けたことがあるが、本人も性被害を「性的いたずら」と軽く思い込み大人になるまで相談してこなかったという事情を説明していた。当事者が言いたい意味やニュアンスを丁寧に伝えようとした視聴者に親切な報道だったと評価したい。