この日の報道からは、男性の性被害問題に対する日本テレビの本気ぶりが伝わってきた。
男性や男児も見知った男性の加害者から性暴力の被害に遭うことがあること。しかし実際には被害に遭った場合、周囲に訴えても男性同士の場合は軽視されてしまいがちなこと。その構図をわかりやすく伝えていた。ジャニー喜多川氏の性暴力が長年見過ごされてきた背景に、ジャニーズ事務所特有の問題だけでなく、社会全体に広がるこうした背景も影響しているとして、被害者のケアや再発防止に取り組む専門家を登場させて伝えていた。男性の性被害という問題を伝える上で、正攻法といえる報道だ。
TBS、NHK、フジ…他局はどう報じたか
他の局はどう報道しているのか。
ジャニー喜多川氏による性加害問題で被害にあった元ジャニーズJr.らの実名顔出し証言をテレビで最初に放送したTBS「news23」は、7月26日、ジャニーズの問題を受けて政府が男性の性被害ホットライン設置などへと動いたとして、ジャニーズ問題と政府の緊急対策を関連付けて伝えた。
NHKもリード文ではこの2つの出来事を関連づけて伝えた。一方で7月27日のテレビ朝日「スーパーJチャンネル」は、政府の緊急対策に対して性被害を受けた元ジャーニーズのタレントが野党側の質問を受けて「実情がわかっていない」と批判したと断片的に伝えるにとどまった。7月25日のフジテレビ「Live News α」はジャニーズの性加害で国連人権理事会の作業部会が元タレントに聞き取りを行ったニュースを短く伝えただけだった。これではどんな意味があるニュースなのか、視聴者にはよくわからない。
場当たり的にその日会見などをした人物の発言を切り取ってニュースを作っている姿勢の番組もまだ多く、安直さを感じてしまう。
日本テレビのように、視聴者に対して、男性の性被害を解決するための問題提起をしようという意識は全体的にまだまだ希薄な印象を受ける。
それぞれのメディアが先陣を切って「男性による男性に対する性暴力」を防ぐ社会へと誘うような正攻法の報道に取り組んでほしい。
国連人権理事会の聞き取り結果を報道するのか
来日中の国連人権理事会の作業部会のメンバーは元ジャニーズの性被害者たちからの聞き取りを進めてきた。8月4日に記者会見する予定なので、聞き取りの結果についても何らかのコメントがあるものと思われる。これを各テレビ番組がどのように報道するのか、あるいはしないのかは大いに注目される。
TBSの「報道特集」は翌5日に性加害の被害者たちがジャニーズ事務所による調査や国連人権理事会の作業部会による聞き取り調査をどのように受けたのかを特集するという。
ジャニーズの性加害問題で一部の報道関係者の意識が活性化したように見えるのは歓迎すべきことだ。国連の記者会見を各局はどのように報道するのだろうか。