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未確認でも「不正は社員の独断」と答えてしまう心理

 報道によればビッグモーター社は完全なトップダウン型の企業で、“鶴の一声”ですべてが決まっていたという。

 しかし保険金の不正受給が組織的に行われていたのではないかという質問については、兼重氏は自分の責任を否定し、社員の独断であると発言した。

「組織的ということはないと思います。個々の工場長が指示してやったのではないか。それでないと、こういうことは起きないと思っています」

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 そして「まだ事実確認は取れていませんが」と続けたのだ。このような会見では、事実関係を明確に伝えるために、確定した情報を伝え、未確認の部分については「調査中」などと答えることが重要だ。しかし兼重氏は、確認もせずに工場長の指示と発言したことになる。

 ここには、兼重氏の強烈な『バックファイア効果』が見てとれる。『バックファイア効果』とは、自分に都合の悪い証拠、信じたくない情報などに直面した時に、それを否定して自分の信念に固執してしまう傾向のことである。

 兼重氏は経営陣の関与や組織的な不正という見方を即刻拒否するために、まだ確認が取れていなくても「工場長の独断」であることにしたかったのだろう。

ビッグモーター ©時事通信社

 不正請求に手を染めた者が104名もいるという事実を前にしても「知らなかった」と断言し、問題発覚後に社内向けに「全社員の2%の不祥事を、世間の関心を集めるために、会社全体の組織ぐるみだと決めつけて報道しています」とLINEメッセージを送ったことからも、兼重氏の『バックファイア効果』の強さはよくわかる。

 過去に告発があったことについて問われると「工場長との確執だと思い込んでいた」と答え、「仲良くやってくれ」と指示を出すだけで「深く追求しなかった」という。

 話しぶりからも、都合の悪い問題は頭から否定し、自分とは切り離して考えていた様子がうかがえる。ビッグモーター社で降格人事が頻発していたことも、兼重氏にとって都合の悪い情報を上げる人物を切り捨てていたと考えれば納得がいく。