43年ぶりにオリジナルフルアルバム『追憶』をリリースする梶芽衣子さん。それも初のロックだという。
「28年続いた『鬼平犯科帳』が終わって、これからどうしようかなと思っていたときに、それこそ43年前に私の歌のプロデュースをしてくれた鈴木正勝さんの息子さん、赤ちゃんの頃から知っているシン君こと鈴木慎一郎さんが私の曲をやりたいと会いにきたんです。私は演歌じゃなくて、ロックだろうと」
『野良猫ロック』『女囚さそり』『修羅雪姫』『鬼平犯科帳』など、人気シリーズ作品ではアウトサイダーの役が多い梶さん。ロックを歌うのは必然だったのかもしれない。年齢を感じさせない艶のある声と声量に魅了される。
「日本ほど年齢がネックとなる国はありません。日々新しいことにチャレンジするのが難しくなる中で、70歳になった私が初めてロックを歌うなんて最高でしょう?」
東映にいた時代は年間60曲も歌っていたという梶さん。映画『女囚さそり』シリーズ挿入歌「怨み節」は120万枚の大ヒットで、日本有線大賞優秀賞も受賞した。
「『無宿(やどなし)』の現場で勝新太郎さんに私の歌を聴いてもらう機会があって、『いいね。これからも役者の歌で行け』と言われたんです。その当時はよくわからなかったのですが、歌も芝居で、役のように、自分の中に取り入れることができるかどうかが大事なんですね。演歌は自分の間(ま)でゆっくり歌えるけれど、ロックはそうはいかない。『怨み節』のロックバージョンは鳥肌が立つほどかっこよくて、これらをどう歌えばいいんだろうと最初は落ち込みました。でも1週間くらい悩んで、この曲の女はどういう女でどういう心境なのか、自分の中でどう演じようかと考えられるようになってからは、本当に楽しかった。レコーディングも一発OKのものが多かったですね」
新しいことに挑戦し、「媚びないめげない挫けない」をモットーとする生き方は、3月12日発売の初の自伝『真実』(文藝春秋刊)にも描かれている。生意気と言われたデビュー時代、主演女優賞を総なめにした映画『曽根崎心中』の苦労、望んでいた企画を奪われた失意と怒りと達観、錚々(そうそう)たる監督・共演者との撮影秘話から、家族や恋人の話など、今まで明らかにしていなかった素顔を見ることができる。
「『真実』というタイトルの通り、ここに描かれていることは嘘偽りのないありのままの私の姿です。女優としてやってきた中で、諸先輩方に本当にお世話になりました。その方々に恩返しできることがあるとすれば、皆さんに認められる仕事をして、芸能界で梶芽衣子としてしっかりと生きていくこと。その思いを本に残せたことが嬉しいです」
かじめいこ/1947年東京都生まれ。『野良猫ロック』『女囚さそり』『修羅雪姫』シリーズ、『曽根崎心中』『鬼平犯科帳』など数々の映画・テレビドラマで異彩を放つ。クエンティン・タランティーノ監督が梶さんの熱烈なファンで、『キル・ビル』に彼女の楽曲を使用したこともある。
梶芽衣子『追憶』
HPにて先行発売中のアルバム『追憶』のリリースを記念したコンサートが、3月13日、新宿ReNY(03-5990-5561)にて開催。
梶芽衣子オフィシャルサイト http://meikokaji.jp/