文春オンライン

「あれほど死にたいと思っていたぼくが生きようと思えている」薬物依存症に苦しむ清原和博を救った次男のランニング・ホームラン

『薬物依存症の日々』より #3

2023/08/11

source : 文春文庫

genre : ニュース, スポーツ, 社会

覚せい剤取締法違反、現行犯逮捕

 そのときはすでに覚せい剤にどっぷりとはまり込んでしまっていました。友人や知人には噓をついて、そういう人たちとの連絡も自分から断って、まわりにはだれもいなくなっていました。ひとりぼっちで「とにかく覚せい剤はやめなければいけない」といつも考えていました。

 あの日も、それまでの数日間は自分なりに使わずにいられたのに、こんな大事な日に限ってなぜやってしまうんだろうと自己嫌悪に襲われていました。

 次に考えたのは、とにかく薬物を打つのに使った道具をゴミ箱に捨てなきゃならないということでした。薬物の影響なのか、あのころは常にだれかに見られているような感覚がありました。

ADVERTISEMENT

 そしてまさに注射器を捨てようと立ち上がった瞬間、まるでぼくが覚せい剤を使うのを見ていたかのように警察が踏み込んできたんです。

 大勢の捜査員がマンションの部屋になだれ込んできたという記憶があります。

 そこはまさに覚せい剤使用の現場でした。

 テーブルにあった薬物を警官にゆび指されて「これは覚せい剤ですね」と聞かれました。

 ぼくはただただ呆然(ぼうぜん)としていて何も考えることができずに「はい。そうです」と答えたような気がします。ふわふわとしていて、まだ自分が捕まったんだという現実感がありませんでした。

「午後10時37分、覚せい剤取締法違反で現行犯逮捕──」

 いろいろな手続きが終わった瞬間、そう宣告されました。

覚せい剤取締法違反で逮捕されたときの清原和博氏 ©文藝春秋

 捜査員から腕に手錠をはめられる「カチャン」という音と肌に伝わる金属の冷たい感触によって、ぼくはようやく自分がやってしまったことの重大さを認識しました。

 車に乗せられて警察に連行されていくときは、頭の中がグルグルとまわっているような感じでした。混乱していて、ああ、俺は逮捕されたんだ、どうしよう、どうしよう、どうしよう……と、そればかりが頭をめぐって、他に何も考えることができませんでした。

 人の記憶はどんどん薄れていくと言いますが、ぼくにとっては夜の中をパトカーに乗って連行されていくあの光景は、まったく薄れることがありません。

 だから、あれから4度目の2月2日も、いくら他のことを考えようとしてもあの日のことが頭から離れず、悶々(もんもん)としながら過ぎていきました。

関連記事