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悲鳴を上げていた吉田の腰部

 2017年1月からトレーニングを開始した二人。吉田は胸が開き腰椎が伸展、腰部に負担のかかる、いわゆる“反り腰”の典型的な姿勢だったという。

「腰椎が過剰に反った状態でバットを振り続ける、つまり身体の『回旋』を続けると、腰部に疲労が蓄積します。何百回、何千回とバットを懸命に振り続けることで、吉田選手の腰部は悲鳴を上げていたのです」

 トレーニングの目標は明快だった。「休まず試合に出続ける」こと。「怪我をしない身体づくり」のために、身体の使い方を根本から見直したのだ。

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「紙風船トレーニング」で体幹筋を強化  Ⓒ時事通信社

「日本を担う若い人たちの手本に」

 室伏氏は、出勤前にレッドソックスの試合を観ることが毎朝の日課だという。

「テレビの画面で吉田選手のスイングを見る度に、私は見惚れてしまいます。なんて綺麗なんだろう、と。本当に気持ちのいいスイングです。

 相当力が入っているはずなのに、一切の力みを感じさせないし、強引なところが全くない。

 どん底からよくここまで這い上がって、本当に素晴らしい選手になったと思います。吉田選手の挑戦からは私自身、学ぶところがたくさんありました。ひとつは、『乗り越えられないものはない』ということ。それは彼の信念でもあると思います。

 野球選手としてだけでなく人間としての素晴らしさは、今後の日本を担う若い人たちの手本になるのではないでしょうか」

 このほか、室伏氏が伝授した「紙風船トレーニング」の詳細、重圧に打ち克つメンタルの保ち方など、“怪我しにくい身体づくり”というアスリートの命題に取り組んだ二人の秘話を綴る「吉田正尚選手からの手紙」全文は、「文藝春秋」2023年9月号(8月10日発売)と「文藝春秋 電子版」(8月9日公開)に掲載されている。

文藝春秋

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