8月4日(金)の国連人権理事会の作業部会の専門家2人による記者会見は、午後3時から日本記者クラブで行われた。また、国連の会見を受けて、被害者側である「ジャニーズ性加害問題当事者の会」のメンバー7人も午後5時から同じ会場で記者会見を行った。ちょうど夕方のニュース番組が放送されている時間である。「国連」の重みは大きい。結果として民放キー局とNHKのすべての局がこの日、ニュースとして報道した。
生放送を番組に入れようとすれば可能な時間でもある。夕方ニュース番組で「当事者の会」の会見の様子を生放送で伝えたのかどうか、各局調べた。番組内で生放送を交えてその内容を伝えたのはTBS とフジテレビの2局だった。
各局で最長だったフジテレビ「イット!」
国連の記者会見が報じられた8月4日の夕方と夜のニュース番組でどの程度の時間、この問題を扱ったのかを筆者が手計算で集計したのが【図1】だ。夕方ニュース番組の中でもっとも長い時間、ジャニーズ性加害問題を放送したのがフジテレビの「イット!」だった。これまでTBSや日本テレビと比べ、この問題の報道で熱心だったとはいえないフジテレビだが、姿勢を一転させて「イット!」は「当事者の会」のメンバーによる記者会見を生放送で伝えた。
「実数としての数百人ということに関して私たちは、もっと多いのではないか、4ケタに達するのではないかと考えております」「人類史上最悪の性虐待事件、これがようやく明るみに出た」(元ジャニーズJr.で「当事者の会」副代表の石丸志門氏)
「私がジャニー喜多川氏による被害を受けたのは21年前でした。そして性加害問題について判決が下されたのが19年前です。その後も被害は続いていました。なぜそこで食い止められなかったのか、私も先輩方もずっと口惜しい思いをしてきました。19年前、今日のようにメディアのみなさまが集まって話を聞いていて下さっていたら被害者は増えていなかったかもしれません」(元ジャニーズJr.で「当事者の会」会計担当の中村一也さん)
これまであまり力を入れてこなかったためでもあるのか、「イット!」ではジャニーズ事務所の藤島ジュリー景子社長の謝罪動画なども交えてこの問題を一からわかりやすく伝えるという姿勢に徹していた。だが、驚いたのはそこに「欧米の視点」が強調されていた点だ。