真面目に、事務所の門を叩いて「極道になります!!」なんて人間は、少ないと思う。大体が、知り合い。または、知り合いの知り合い。顔見知りの極道に声をかけられて。そうやってこの世界に入る者が多いとワシは思う。ワシも、きっかけはヤクザの先輩との交流やった。
知り合いやからと、若さゆえに極道への一歩目はこうも簡単に軽く考えてまうのかもしれん。形よく見えとった若頭に誘われた。極道に入れば待っとると。だが憧れた世界は、ワシが想像しとったような、きらびやかな世界などとはホンマにほど遠かった。
18歳のワシが、親の善し悪しで組が左右されるなんてことは想像すらでけへんかったのは事実。結果、尊敬できんようになった親の下で、極道を貫くことはワシにはできんかった。せやから、極道を貫くよりも、指を落とす覚悟を決めた。指を落とさずに飛べたことは運がよかったのかもしれん。
この世界に、軽く足を踏み入れたことの失敗から学べ。そう思った。
ちゃらんぽらんな人間では務まらん
極道に入ってワシは、耐える精神。プロの根性。プロの暴力。時には、破天荒で無謀なこともやけど、礼儀を重んじることや、所作をすごく学んだ。何よりも極道は、想像してるよりも随分と苛酷で、ちゃらんぽらんな人間では務まらんことも、親分についていく覚悟を決めな務まらんということも肌で感じることができた。
せやから、失敗だけやない。得たもんも、大きかったともワシは思う。
人生初めての極道生活の幕は自分で閉じた。先のことなどわからへんけどなるようになるやろ。
ホンマかいな……。