事務所にはバケツを何杯もひっくり返したような大量の血が……。新米ヤクザを恐怖させた、とある暴力事件の顛末をお届け。
十数年前、関西の広域組織に所属していた元暴力団員「てつ」氏の著書『関西ヤクザの赤裸々日記』(彩図社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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組長の愛人に手を出す男
下積み生活を送っていたある日のことやった。
親分が車に、組の名簿や武器類(木刀、キッチンの包丁、ゴルフクラブなどなど)、それから組の入出金票などを車に積んでいると思うていたら、
「その辺走っとけ」
そうワシに言わはる。
たまに警察が行う「ガサ」という、事務所への手入れがくるのか思うて黙って従い、外に出て車へと向かった。
「親分、自分の愛人と他の男とのトラブルやて、事務所に2人を呼んだらしいで」
外に出ると他の組員から、そういうわけだと事情を聞いた。あまりにも興味がなかったワシは、「ああ、ホンマに」ぐらいの気持ちで、2時間ほどぶらぶらと車でその辺を走っていた。
他の組員から電話があり、ワシは事務所へと帰っていった。
事務所のドアを開けた瞬間……、ホンマ、無防備だったワシは目の前に広がる光景を見つめて思わず息を呑んでしもうた。
映画やん……。
まるで、アメリカのホラー映画を見ているかのようやった。事務所が血まみれになっている。そりゃあワシかて、そんな光景が目の前にいきなり飛び込んできたら、「人、殺したんや……」と思うのも当然や。