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自称教授は福島市以外でも様々な場面に顔を出していた

 市として大々的に宣伝したり、桃の販売促進戦略に絡めたりしなかったのは、「生産者がもらった物に、市が乗っかって何かをしようという考えはなかった」からだという。

 市の農政に詳しい関係者は、「隣の桑折(こおり)町が県を通じた公式ルートで桃を献上しているのに、どっちがどっちという形になりかねず、対応が難しかったのではないか」と見ている。

 自称教授は福島市以外でも様々な場面に顔を出している。

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 Aさんが設立に関わった学会には特別会員として参加し、「講話」までしていた。

 同学会は、気象予測を農業にいかそうと研究している人の集まりだ。全国の農家ら約70人が所属している。2022年の研修会では自称教授と茨城大教授が講話を行い、自称教授は植物歳時記と気象予測について話した。2023年の研修会でも同じ顔ぶれで講話しており、自称教授のテーマは農事気象予測と自然だった。

 同学会の役員は「容疑者が学会に加わったのは、会員からの紹介でした。学識者は会員ではなく、特別会員という形になります。講話については、東大の教授が話す内容なのかなという疑問も感じましたが、あまり余計なことは言えませんでした」と語る。

 さらに驚くべきことに、自称教授は東京都でも講師を務めていた。

 町田市から八王子市に広がる都立小山内裏(おやまだいり)公園。大規模開発された多摩ニュータウンの西部に位置するものの、多摩丘陵らしい雑木林や、湧水豊かな谷戸(谷状の地形)が残されており、立入禁止にされた四つのサンクチュアリで貴重な動植物が守られている。

 同公園では年末になると、運営する東京都公園協会が「春の七草の寄せ植え教室」を開き、その講師を務めていたのが自称教授だった。

自称教授の力量は……?

「開催のお知らせ」には、竹を切った器に寄せ植えをする方法を「丁寧にアドバイスします」と書かれている。募集は小学生以上の15人で、参加費は材料費を含めて500円だった。

 講師の肩書は「樹木園芸研究所 所長」とだけ記されていて、同公園パークセンターの幹部職員は「東大の教授だという認識はありませんでした。手許の資料でたどると、寄せ植え教室は2016年から毎年同じような形で開いていて、毎回その人に講師を依頼しています。最初にどういう経緯で依頼するようになったのかについては、当時の職員が退職するなどしていて、分かりません。ただ、こちらでは催しとして特に問題はなく、むしろ人気の教室でした。春の七草の寄せ植えを教えてくれるような講座は他にあまりないのです」と話していた。

 2023年の年末も同様の教室を開くかどうかについては、「講師の問題があるだけでなく、コロナ後のイベントの再編も検討しており、まだ決まっていません」と歯切れが悪かった。