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「福島から皇室に献上されたはずのモモは一体どこに…?」自称・東大院客員教授“詐欺犯”の見えない動機

「福島から皇室に献上されたはずのモモは一体どこに…?」自称・東大院客員教授“詐欺犯”の見えない動機

福島「献上桃」詐欺事件の裏側#2

2023/08/18

genre : ニュース, 社会

自称教授と会った市長が気にしたことは?

「私のところに農家の方から報告がありました。その人(自称教授)が福島に来ていて、『ぜひ市長も会ってほしい』というので、会ったこともあります。(桃を献上するには県を通すという公式ルートがあるが)一方でこの人が言うには、『宮内庁に大膳課というのがあり、こちらは日々の食事を扱っている。福島の桃が非常にいいので渡した』ということでした。私はその話を聞いて、公式ルートではなく、日々の調達というのがあるのかなと受け止めました」などと述べた。

 木幡市長は元総務官僚で、岡山県の副知事や香川県の部長として出向したこともある。「献上」の仕組みには詳しいはずだが、それでも幻惑されたのである。

 木幡市長が気にしたのは、むしろ皇室の商業利用だった。

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「木札がどの程度使えるのか、気になりました。彼(自称教授)は他にも(同じような調達の)例があると言っていたので、自分で調べたら、木札をボーンと出して物を売っている例がネット上で確認できました。大膳課を通じた調達と、木札による返礼みたいなのが、一般的にある程度あるのだなと、私自身が誤認してしまいました。(嘘を)見破ることができず、農家の助けになれなかったのは忸怩(じくじ)たる思いです」などとも語った。

 市長がインターネットで確認したのは、自称教授にだまされた県外の地区の情報だったのだろう。そうした地区の発信が、詐欺犯の発言を裏付けるような印象を持たせて、行政のプロまで信じさせた。インターネットの恐ろしさを感じさせる出来事である。

 市長に足りない部分があったとすれば、宮内庁への確認だろう。

桃、リンゴ、梨、ブドウ……。東北電力の施設にも福島市の果樹王国のPRが(福島市中心部)

では、どのようにすればよかったのか

 宮内庁は中央省庁なので、市町村からは都道府県という“中二階”が間に入っている。一般の国民にとっても秘密のベールに包まれたイメージがあり、敷居も高い。それでも気になることがあれば、直接確認した方がよかった。

 関係する行政機関などに直接連絡して確かめるというアナログ的な手段が有効なのは、オレオレ詐欺(特殊詐欺)の防犯対策に似ている。

 福島市内では、騒動に巻きこまれた施設もあった。「道の駅ふくしま」が偽木札をパネル掲示していたのだ。

 福島市農業振興課の担当者が説明する。「木札の表裏をカラーコピーしラミネート加工した物をどこかで紹介できないかと、農家から相談されました。ちょうど2022年4月に道の駅ふくしまがオープンして、特産の果物の販売に力を入れていました。福島にはどんな果物があるか、どんな時期に採れるかなどを掲示したコーナーがあったので、木札のカラーコピーのパネルも2022年の盆前に張り出しました。本物かどうかについては、市が受領したわけではなく、市民がもらった物なのに疑ってかかるようなことはしませんでした」。

 取り外したのは、掲示から1年近く経過した2023年7月中旬だった。「献上桃ではなかったという新聞記事が出る直前に、農家から『事実関係が怪しくなった』という一報をもらいました。その日のうちに取り外しました」と担当者は話す。