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「足がそうなったのは、まず君が原因」音声に残るAの父の言葉

 このときの音声記録が残っている。

【音声入手】謝罪会のはずが事実上の糾弾会?〜埼玉・川口市いじめ自殺
(Tetsuya Shibui YouTubeチャンネルより)

辰乃輔さん 「みんなに聞こえない声で間違いなく言いました。その証拠にこんな足になっています。じゃなきゃこんな足になってません。なんで毎回、みんなに聞こえない声で言うのか。言ってないって嘘を言うのか。Aさんのおばあちゃんが近所の人に、Aさんのところも被害者だとか、僕の家を裁判にかけるとか言って……。なんでおばあちゃんが出てくるのですか?」

 

Aの父親「関係あります。Aの血筋です。私の親です。Aにとってみればおばあちゃん。血縁関係。飛び降りたのは自分の意思ですよね?」

 

辰乃輔さん「死ななきゃわかんないんだと思ったんです」

 

Aの父親「その足になったのは、君が飛び降りたから。それを人のせいにするんじゃないよ。君の足がそうなったのは、まず君が原因。君が飛び降りたっていう行為をしたから」

 

Aの祖母「自分の意思が弱いのよね。それを人のせいにして」

 

Aの父親「冷静に思った時に、自分でなんで、悪いところがあったら、非があるのかなってことは考える」

 

辰乃輔さんの母親「自分の子でも言えるのか?」

 

Aの父親「言えます」

 

Aの祖母「何を求めているのか?」

 

辰乃輔さん「謝罪してほしい」

 

Aの祖母「なんで謝罪しなくちゃなんないのよ。あんただって100%いいわけじゃないでしょ」

 このまったく噛み合わないやりとりを、学校側はただ静観していたという。

「Aの祖母と父親との話し合いの後、私は辰乃輔が心配で、自分の足と辰乃輔の足を紐で縛って、夜、自宅から抜け出さないようにしていました。私自身も眠れない日々が続きました」(母親)

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自殺直前にも「A家族の言葉がずっと頭からはなれない」

 後に調査委がまとめた報告書では、「辰乃輔さんのいじめによるトラウマは、二次被害によってさらに強化された」とされている。その上で、「いじめをしたとされる側が、いじめの事実を争っている場合には、いじめられた側の子どもや保護者を更に傷つける可能性が高いので、学校は安易に当事者の面談を実施せずに、当事者以外の生徒を含めた丁寧な事実調査をすべきである」と提言した。

辰乃輔さんの遺したノートより ©渋井哲也

 このときのAの父親、祖母の発言はいつまでも辰乃輔さんの心に残り、辰乃輔さんは特別支援学校に進学後も睡眠障害に悩まされていた。自殺直前のノートにも「謝罪の会」は何度も登場し、<A家族の言葉がずっと頭からはなれない>などと書かれていた。(#2に続く)

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 【厚生労働省のサイトで紹介している主な悩み相談窓口】

 ▼いのちの電話 0570-783-556(午前10時~午後10時)、0120-783-556(午後4時~同9時、毎月10日は午前8時~翌日午前8時)

 ▼こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556(対応の曜日・時間は都道府県により異なる)

 ▼よりそいホットライン 0120-279-338(24時間対応) 岩手、宮城、福島各県からは0120-279-226(24時間対応)