「こんな溝浚(どぶさら)い芸人が呼ばれるような番組じゃない」

 野性爆弾・くっきー!がそう言って笑ったのは、『ボクらの時代』(フジテレビ)だ。彼と一緒に座っているのは、ハリウッドザコシショウとレイザーラモンRG。飯尾和樹(ずん)を含めた4人で「キチ4」なるライブを定期的に行っているとおり、クレイジーでイカレた芸風の3人だ。『ボクらの時代』といえば、様々なジャンルで活躍する3人がオシャレな場所でしっとりとトークする番組というイメージ。くっきーが言うように、この3人には似つかわしいとはいい難い。実際、その前の週のエンディングでこの3人が並ぶ予告が流れるとSNSは騒然となった。オープニングで小林聡美の声で真面目に紹介されるのも無性に可笑しい。

ハリウッドザコシショウ ©文藝春秋/野性爆弾・くっきー!/レイザーラモンRG ©時事通信社

 しかし、『R-1グランプリ』(関西テレビ・フジテレビ系)の審査員を務めていることで自明だが、真面目に話すべきところではしっかり真面目に話すザコシショウ。他の2人も同様だ。3人は笑いを交えながらも基本的には真面目な芸論を語っていく。たとえば、売れるはずがないと言われ続けていたにもかかわらず40歳を過ぎてブレイクしたザコシショウに対しくっきーが「悪しき流れを作ったのは、ホンマあなたですよ。売れへんのに芸人を続けて、老いて、腐って、死んでいく人間をいっぱい作った」と彼流の言い回しで言って笑うと「やみくもに長く続けてればいいってわけじゃない」とザコシショウは返す。いかに「自分の好きなところを突き詰める」かが大事なのだと。

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 最近は「わけがわからん」などと言われることが少なくなったというくっきーは、ザコシショウに以前、「やってることは変わらんけど、見せ方がうまくなっていってる」と言われ合点がいったと話す。つまり、やりたいボケで最大限笑いを起こすために、フリの部分では我慢し、見ている人が理解しやすいものを提示することができるようになった、と。思えばこの『ボクらの時代』もそうかもしれない。この鼎談が、普段のハチャメチャなボケをより際立たせて、より面白くするに違いない。

 全国の100人くらい、つまり「億分の100」が笑ってくれればいいと思ってやっているというザコシショウや「ダサいことはやりたくない」と言うくっきーにも単純に痺れたし、「最期は笑って死にたい」と笑い合う3人の姿は素敵でとてもいい時間だった。それでも、途中、便意を催しトイレに立ったザコシショウが戻ってくるときに、大ボケを仕込んでくることを期待してしまう自分も確かにいた。その場が阿鼻叫喚のギャグ合戦になることを。しかし、当然ながらそんなことは起こらない。3人の普段の芸風がフリとなって、日曜の朝に絶妙な違和感を醸し出していた。

INFORMATION

『ボクらの時代』
フジテレビ 日 7:00~
https://www.fujitv.co.jp/jidai/