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ーーセルビア以降、ずっとヨーロッパに。

市川 国際大会に出まくって、練習しまくってというのを、2年間続けてます。トルコ、チュニジア、エジプトに、毎週同じ大会をやっているリゾートホテルがあるんです。出場者はそのホテルに泊まらないといけないんだけど、割高なんですよね。なので、大会運営の人たちと仲良くなって、仕事を手伝ったりして宿泊代を安くしてもらったりして、なんとか。

 去年、一時帰国した際に新しいスポンサーもついて。節約すれば、なんとかギリギリやっていけています。

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何歳からだってなんだって挑戦できる

ーーそして今年の5月に、ダブルスの世界ランキングで2090位になったと。

市川 そうです。チュニジアの大会で。

ーー25歳からテニスを始めたメリットって、ありますか。

市川 始めたのが遅いから下手だし、伸びるのも時間がかかるし、ほかの選手よりすべてのことのハードルが高い。けど、そのおかげで俺はユニークな存在になっている。むしろ子供の頃から始めていたら、他の選手と同じなんですよ。

2016年スペインでの集合写真

 でも、僕がなにか成し遂げたら前人未到の記録になるわけで。僕の挑戦というか、やっていることに社会的な価値も生まれているんですよね。きれいなことを言わせてもらえば、何歳からだってなんだって挑戦できるってことを見せられるとは思うんです。

ーーそれが今後の展望でもあると。

市川 自分的には挑戦の意味合いが変わってきていて。テニスを続けてきて、僕は人を負かすとか人と戦う競争心はないことに気づいたんですよ。自分と向き合って、それを極限まで突き詰めるのが得意で好きなんだって。

 だから勝敗そのものというより、トッププロがプレーしている瞬間の研ぎ澄まされた感覚を知りたいんです。そのレベルに到達しなければわからないからこそ、そこまで行きたいなって。

 

――開成、東大時代の同期には会社を経営されていたり、結婚して家庭を築いている方もいると思いますが、他の人と自分を比べることはないですか。

市川 ないですね。たぶんそこが僕がこの挑戦をできている根本的な理由で。僕は小学生の時から、そういう未来を頭の中に描いたことがあんまりなかったんです。おそらく残念ながら、幼少期から幸せな家庭を持ってなかったことがスタート地点にあったかもしれない。

 友達のちょっと裕福な家庭に行っても別に何も思わなかったですし。自分がそうなりたいとかも思わなかった。外資系のコンサル会社とか投資銀行とか、マッキンゼーとかそういうところに勤めて何千万プレーヤーになっている人たちの住む港区のタワーマンションにたまに行ったりしましたけど、それが幸せだとは感じなかったです。

 みんな全然いいやつらだし、すごくリスペクトしてますけど、お金があること自体が幸せというわけではないと思っていて。彼らは彼らが見ている幸せを手に入れていると思うので。僕が僕なりの幸せを持っているのと同じで、彼らは彼らの幸せを持っているということです。

テニスは35歳で選手生命を終えてるだろうと踏んでいた

ーーお話をうかがって、ふいにテニスをやめて違う世界に進む可能性もなくはないような気がしたのですが。

市川 そういう人やものに出会っちゃったら、行っちゃうとは思います。そうなったとしても、受験でもテニスでもやってきたから、たぶん突破できる気もします。実際、やりたいことがふたつあるんです。

ーーなんですか?

市川 置き去りにしちゃった音楽と脳神経の研究ですね。これもテニスを続けてきて改めてわかったんですけど、やっぱり音楽が大好きだったなと強く思ったんです。あと、理2の生物系で東大に入ったぐらいなので、脳の仕組みとかにも興味があって。

 もともとテニスは35歳で選手生命を終えてるだろうと踏んでいて、残った人生を音楽と脳の研究に費やそうと考えていたけど、予想に反して39歳になってもテニスをやれちゃっているんでね。

 とりあえず、死ぬまで予定がいっぱいです。

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市川誠一郎

用具提供…HEAD、庭球人

所属…HCA法律事務所、ケイズハウス

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