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常軌を逸したな練習量に周囲の外国人がザワつく

ーーたくましいですね。

市川 自分で言うのもアレなんですけど、わりとサバイバル能力に長けてるんですよ。これは海外生活で力になってますね。

 でも、シェアしてたアパートも出なきゃいけなくなって、別のシェアアパートに移って。電気が点かなかったり、お湯も出なかったりで。冷房もないから窓を開けると、コウモリが飛び込んでくるんですよ。耳をつんざくような鳴き声で。そいつを殺して廊下に叩き出したら、今度はゴキブリがあちこちから湧いて出てくる。そんなとこに暮らしながら、土日も練習しまくって。

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 みんな午前に2時間、午後に1時間半くらいしか練習しないんですよ。しかもスペインだからシエスタがあって、3時間ぐらい昼寝したり休んだりする。僕は10分で飯を食って、すぐコートに出て1人でひたすらサーブ練習して。もう、練習相手がいないときは掃除のおっちゃんに球出しを頼んでました。おっちゃんもいつも練習してる僕を見て応援してくれていたので。

 

ーースペインでも、尋常ならざる練習量にザワつかれたのでは?

市川 掃除のおっちゃんに球出ししてもらってるのがバレて注意されて、それをきっかけに「信じられないぐらい練習するクレイジーな日本人」ってことで知られるようになりました。そうしたらダニエル太郎君が僕のことを面白がってくれて、「家に住んでいいよ」と言ってくれたおかげで、極貧アパートを脱出しました。

 太郎君はトップ選手なので、ツアーで家をほぼ空けていて。飼っている猫の面倒も見てほしいからって、猫の世話係の肩書で半年ほど住まわせてもらいました。太郎くんのご家族には本当にお世話になりました。

技術的な面で苦しみ、引退も考えたが…

ーースペインのアカデミーにいた期間は。

市川 1年です。スポンサーには1年で帰るという公約をしていて。さらにスペイン滞在中に世界ランキング獲得、もしくは帰国後に大会に出て優勝できなかったら全額返済という条件にもしていて。ふたつとも達成できなくて、借金生活となりました。正直、レベル的には日本にいた頃と変わっていませんでしたね。

ーーレベルが向上しなかった要因はなんだと思いますか?

市川 根本的な基礎技術の土台が足りませんでした。ヨーロッパの練習はシンプルで実践的なものが多いですが、それ以前の土台がないから積み上がりませんでした。

 でも、向こうに行って世界のトップレベルを知り、テニスという世界の全体像が分かったのは大きかったですし、追いつけないものではないと感じました。

2020年、チュニジアで

 目標達成できず引退もチラついて1週間ぐらい考えたけど、なんとかして続けようって。で、あっちに行ってみて、日本のほうが技術を細やかに教えてくれるなと感じたんです。それで前と違うテニスアカデミーに入って、相変わらず練習しまくりながら技術をとことん学んでいって。