8月29日(火)、テレビ民放各局の夕方ニュースは、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川前社長による性加害問題について、再発防止特別チームが調査結果を報告するために午後4時から始めた記者会見を「速報」として生中継した。

 被害者である元タレントや事務所スタッフに聞き取った調査報告書を公表した後でこの特別チームによる会見が行われたが、ジャニー喜多川氏による性加害を事実だと明確に認定したばかりか、経営陣の一角にいながら必要な対応を怠ったとして、藤島ジュリー景子社長に辞任するよう提言する内容だった。

 夕方ニュースの生中継で会見を放送したのは日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジテレビの4局だった。

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8月29日、ジャニー喜多川氏の性加害問題に関する記者会見を終えた「外部専門家による再発防止特別チーム」の林真琴座長 ©時事通信社

生中継はテレビメディア最大の強み

 生中継はテレビメディアの最大の強みといえるもので、もし番組放送中に重要な記者会見が飛びこんできた場合は他の項目を飛ばし、後日に回してでも、生中継を交えて長く放送するのが「鉄則」だ。

 この日、日テレ、テレ朝、TBSは「鉄則」に則り、冒頭から特別チームの提言内容について、会見の生中継を交えて放送した。筆者が手計算でこのニュースの放送時間を確認したところ、日テレとテレ朝は1時間を超え、TBSは56分だった。ところがフジは他と同じく番組冒頭で生中継を交えたものの、予定していた項目を飛ばさないためだったのか、ジャニーズ問題の扱いは他局と比べるとかなり短く、日テレなどの3局の半分以下の27分という放送時間だった。

 各局のニュースキャスターたちの多くは、特別チームがジャニーズ事務所の性加害問題について「マスメディアの沈黙」があったと指摘した点に注目した。そして自らを反省して決意表明する人が続出した。

 フジテレビ「イット!」では榎並大二郎アナウンサーが次のように述べている。

フジテレビ「イット!」8月29日より

「何よりメディアとして受けとめねばならないのは、(報告書にあった)『マスメディアの沈黙』という点です。多くのマスメディアがこの問題を正面から取り上げてこなかった。結果、ジャニー氏の性加害は継続され被害が拡大したと。これは『性加害問題当事者の会』の方からも同様の、もっと早くメディアが伝えられていれば被害者は少なかったんじゃないか、というあの言葉がとても重く受けとめられます。(中略)ここからメディアができることはこの問題を取り上げ続けていくことだと、このように思っています」