同じようにこの問題で発言したのは、TBS「Nスタ」の日比麻音子アナウンサーだ。「誠実」「真摯」「覚悟」などと、やや大仰なフレーズが続いた。
「『マスメディアの沈黙』に関しても触れられました。われわれのあり方もしっかりとここで、今だからこそ、顧みて、引き続き、真摯に向き合い、そして誠実に伝え続ける。これを覚悟していきたいと改めて思う会見となっていました」
ニュースキャスターの役割について、「自分の意見を言うこと」だと考えている人は少なくない。今や自分の意見を語るキャスターは目白押しだ。一方で、やや古いタイプのキャスター像かもしれないが、「自分の意見をあえて言わない」ことにキャスターとしての矜持を持つアナウンサーもいる。日本テレビの藤井貴彦アナウンサーはその一人かもしれない。
「24時間テレビ」を終えたばかりの日本テレビは…
日本テレビは、「24時間テレビ」の放送を終えたばかりだ。今年はメインパーソナリティーを「なにわ男子」が務めるなど、例年ジャニーズ色が強い番組だといえる。だが、同局の「news every.」は番組冒頭からこの問題を取り上げた。元ジャニーズJr.で13歳の時に性被害に遭ったことを告白した橋田康さんをスタジオに招き、藤井貴彦アナとともに特別チームの会見について感想を述べた。
橋田さんは特別チームによる聞き取り調査を最初に受けた人だ。藤井アナはそのことに触れて、インタビューの口火を切った。
筆者が感心したのは、藤井アナの橋田さんに対する気遣いだった。震災報道などで定評がある藤井アナの当事者に寄り添う姿勢はここでも発揮されていた。橋田さんは子ども時代の性虐待の被害者である。特別チームが会見で発する言葉によっては過去のトラウマ(心の傷)に触れてフラッシュバックを起こしてしまうかもしれない。このため、会見の様子を見ていられない場合は橋田さんの表情をカメラで映し続けることはしなくてもいいと事前に伝えたという。
構わずにこのまま映してほしいと言った橋田さんはこの日の夕方、日本テレビのスタジオで自分の表情を視聴者へ見せ続けた。