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 カウンセラーの長谷川博一先生に「お願いしたいんですよね」という話をちらっとしたら、先生が「そうしたら、一度お母さんと会ってみましょうか」と言ってくださったんですね。なので母に「会って嫌だったら断ってくれて良いから」と伝えて会ってもらいました。そうすると母が「先生、私は催眠術を受けるんですか」と聞いていて。

――カウンセリングがどういうものなのか少し誤解されていたんですね。

 私も「そう思ってたんだ」と思って。そうしたら先生が「僕にはそんなスキルはないですよ。面白いな、僕は英子さん(東さんの母親)とお話ししてみたくなりましたよ」と。すると母も「私も、先生ならお話ししたいです」という風に。

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 そこは先生の腕ですよね。もうすでに「否定しない」「話をちゃんと聞く」「受け入れる」みたいなことが始まっていて、母としては気持ちがよかったんだと思います。

 

いい意味で期待をせず、諦める部分は諦める

――カウンセリングを実際に受けられてみて、東さんとお母様の関係性に変化はありましたか。

 関係性はめちゃくちゃよくなりました。母から「こんな風に育てなかったら、あなたたちはもっと自分らしく生きられたのにね、ごめんね」というようなことを言われたんです。私はそのときに「ずっとこの言葉を言って欲しかったんだな」と思って。

 私の目標は「母を解放したい」というものだったから、母に「それが最善だったんだよ」と伝えました。無我夢中で夫を支えて、社会の為に尽くして、子どもたちを育ててきて、本当はどう生きたかったのだろうと思っていたし、彼女らしく生きて欲しかったので。

 

――お母様の行動に変化はあったのでしょうか。

 本当に変わりました。今年、3ヶ月半かけて船で地球一周をしてきましたから。来年も行くらしいんですけど。今までだったら「自分は我慢するから、ちいちゃん行っておいで」というような人だったんですよ。

 相変わらずだなと思うこともしょっちゅうありますけれど、お互いにね。でも、それも含めていい意味で期待しないというか諦める部分は諦めるというか、お互いに大切な人であることは変わらないので。

母・英子さんと旅行する東ちづるさん(本人提供)

子供たちには絶対言わなかったことを話し始め…

――東さんは、親子でカウンセリングされた様子を本にして出版されていましたよね。カウンセリングの中で東さんは幼少期からの生きづらさを相談されたと思うのですが、お母様はどういったお話をされたのですか。

 もちろん守秘義務がありますから、すべて終わってから、母の許可も取ったあとに先生から伺ったんですけど。長谷川先生の言葉を借りると、母の心に鍵がかかっていたそうなんです。母の子どもの頃の話を聞いたとき、母は話しながら自分の手の甲を指でつねっていたらしくて。自傷行為です。先生は「今、苦しんでるんだな」と思ったそうです。